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シャネル:アリュール パルファム

CAHEL

ALLURE PARFUM

調香師:ジャック・ポルジュ

おすすめ度:★★★★★

画像:公式HP

 

シャネルやゲランのパルファム(香水)は、同じ香りのオードゥパルファム、オードゥトワレットとまったく別物と考えていいと思う。賦香率による香り立ちの違いを活かすために素材や香調が変えられているのはもちろん、それ以上に作品としての完成度がパルファムは抜き出ている。

なかでもアリュールはその違いがより顕著であり、パルファムはその完成度が頭抜けいて、まさに傑作だと思っている。

 

アリュールのコンセプトは「一人ひとり、すべての女性にその人だけの魅力、アリュールがあるように、まとう女性によって独自のハーモニーを奏でる香り。ひとつひとつ手作業で封をされたボトルに包まれた、6つのファセットに輝くフレッシュ フローラル アンバーの香り(公式HPより)」としているが、パルファムの場合、そんな6つのファルセットなどどこにも見当たらず、正直、コンセプトを超えている。

 

では、アリュール パルファムはどんな香りなのだろうか。

 

トップはマンダリンオレンジのジューシーな甘さから始まる。

このマンダリンの明るさに包まれながら、ピーチ甘さを少し含んだローズ ドゥ メの甘さが広がる。それは、まるでマンダリンがローズにキラキラと眩しい光を当てているようで、一瞬で心を奪われてしまうオープニング。

 

ミドルはローズ。

マンダリンのフレッシュな部分が落ち着いてくると、分厚いローズ ドゥ メが一気に輝きを増す。そのローズがマンダリンを内包していくことで、なんてみずみずしくも明るいローズの輝き。

次第に、ローズの花束を思わせる官能的な甘さや酸味が強くなっていくのに呼応するように、ジャスミンの透明感溢れる白っぽさ、さらにはほんのりバニラの甘さも香り出すことで、美しいアリュールパルファムの音色が完成される。

このアリュールパルファムは、ローズなのに香りの全体像は白い輝きを放っている。アリュール(魅力)が溢れ、感動する。

 

ベースはアンバー・バニラ。

フルーティを感じさせるローズの甘さと、女性らしいエレガントなジャスミンは、バニラとアンバーに包まれていく。アンバーはローズやジャスミンにフローラルらしい深みを与え、バニラはムスクを含ませながら、柔らかくまとめ上げる。色味はまだ白く、輝いている。

最後はパチョリを添えることで、ローズの甘さや、バニラのビーンズ感をしっかり感じながら、ライトオリエンタルアンバーの香りでドライダウンしていく。

 

肌に乗せてみると、最初のマンダリンのフレッシュ部分は拡散するものの、ローズを中心に香りがまとまってくると、みずみずしいローズ、官能的なローズ、柔らかなローズ、ほんのり甘いオリエンタルローズと緩やかに香りを変化させながら、6時間近く持続する。

 

白い輝きを放つようなローズの香りで、日中であれば季節はあまり問わない。それぞれの素材がのびのびしていて、その季節に合わせて香り立ちも寄り添ってくれるように感じる。

 

アリュール パルファムは、オードゥパルファムやオードゥトワレットと異なり、香りの構成はいたってシンプルだ。

素材の確かさをを誇るようなマンダリン→ローズ→バニラの流れでありながら、肌に合わせてみると、緩やかな流れの変化のなかにドラマを感じる。マンダリン、ローズ、バニラ以外の甘さがなく、ジャスミンやアンバーやムスクは、それぞれの個性や香りの移ろいを見事に引き立てている。

 

まるでジャン=クロード・エレナが得意とするシンプルでありながらも、香りの流れは計算し尽くされている。それぞれの香りが調和し、高めながら、輝きが広がっていく作風を、シャネルの貴重なマテリアルを使用することで、芸術性の高い作品へと押し上げているようにも思えてくる。


それは時代も季節も性別も世代も問わない香り。

このパルファムこそがアリュールの名前に相応しい。