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春に似合う香り12選

「春に似合うフレグランス」を香調別に12本選んでみた。

春おすすめの香水はどれにしようと考え出すと、苦行のようにつらい。次々に香りが思い浮かんでしまい、最初は7本、それでは足りずに10本と増えていき、キリがないので12本で手を打つことにした。

 

 

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春の香りについて

春は始まりと別れの季節であり、新たな始まりに期待が膨らみ、辛い別れに胸が締め付けられるように、環境面での変化が多い。

さらに、春の訪れを知らせる春一番から始まり、長い冬を乗り越えた後の小春日和温かさ、まだ冬の名残のような肌寒さ、それに反して汗ばむような陽気など、季節の表情も多彩だ。

そんな気候の変化を待っていたように、様々な花が咲き出し、緑が芽吹く。

シトラスの爽やかさ、グリーンの清々しさ、フルーティのみずみずしさ、フローラルの華やかさ、そして甘い香りへの名残惜しさ。

そう、春はフレグランスたちも賑やかで、新しい香りとの出会いの季節だと思う。

 

シトラス系

1.ルイ・ヴィトン:ルジュールスレーヴ(2018年)

 

ルジュールスレーヴは「夜明け」の意味。

かつて清少納言も「春はあけぼの(春は明け方が良い)」と書いているとおり、春の朝はポジティブに明るさに満ちている。

始まりを予感させるような、清々しいマンダリンずみずしいカシスグリーン。そのシトラスグリーンをジャスミンサンバックマグノリアが透明感を与えている。そしてその余韻を楽しむように淡いウッディムスクが柔らかく包みこんでいく香り。

それは朝日によって「だんだんと白くなっていく山の稜線が少しずつ明るくなり、雲は夜空と朝日が重なり合って紫がかっていく」、、、あの枕草子の表現と重なる。

ルジュールスレーヴは日本のマーケットが、シトラスを効かせた嗜好の良い香りをリクエストしたことから生まれたとされている。

その結果、春に欠かすことができないシトラス系の香りで、持っているととても重宝する一本に仕上がっていると思う。

 

グリーン系

2.キリアン:バンブーハーモニー(2012年)

 

バンブーハーモニーは日本最古の物語「竹取物語」に触発された香り。

そのバンブーの硬いグリーンを中心に、爽やかなシトラス香ばしいホワイトティー、さらには春らしいみずみずしいミモザなど、嫌われるにくい嗜好の良さと、飽きることのないほどよい個性と、使い込んでいける品質の良さを兼ね備えた香りで、とにかく使いやすい。

もちろん夏でも似合う。でも、この凛としたグリーンやミモザの滴るようなフローラル感が、葉桜の頃から梅雨にかけて特に映えるのではと感じる。

トップからミドルはシトラスやグリーンが鋭く立つものの、ミドルの後半以降は爽やかさを残しながら、肌に溶け込むようになじんでいき、いつ使っても、気持ちが落ち着いていく懐かしさがある。日本人の鼻や日本の文化に合った香りだと思う。

 

3.シャネル:ベル レスピロ(2016年)

ベルレスピロとはココ・シャネルの別荘の名前であり、春に似合うグリーンフローラルの傑作だと思う。全体としてフローラルよりもグリーンが強いため、グリーン系ということにした。

新緑のような強いリーフグリーンに包まれた、フローラルの明るさと甘さ。グリーンの青さに呼応するように、フローラルの蜜のような甘さが引き立つ。さらには土のようなナチュラル感

そんな春の空気に囲まれながら、ナチュラル一辺倒に進むのではなく、上質なラグジュアリー感も随所に感じ取れる新緑のなかで、日向ぼっこをしているような至福の時間を過ごすことができる香り。

休日の日中に、家でゴロゴロ過ごすのではなく、きちんと正装して散歩する。そして、春を空気を身体全体で楽しんでみる。

ベルレスピロはそんな貴重な休日を上品に彩ってくれる香り

 

フルーティ系

4.ミラーハリス:ロスト イン ザ シティ(2018年)

ベルレスピロが別荘地の春の香りだとすれば、このミラーハリスのロスト イン ザ シティは都会の街並みから感じられる春の香り。テーマは、47%もグリーンが占めるロンドンの自然と、都会的な街並みのコントラストだ。

ベルガモットのはっきりした果皮感と、アンジェリカのカチッとしたグリーン、それらをカシスの冷たさが凛とした印象を与えている。

そこにルバーブのみずみずしい苦みのある甘酸っぱさや、アロマティックなゼラニウム、ピンクイメージのピオニーローズの可愛らしさが香ることで、一気に春っぽくなる。グリーンやアロマティックな硬さが、どこか人工的なアクセントになっている。

緊張感のあるシトラスグリーンや、みずみずしいフルーティフローラルを効かせた、春から夏にかけて似合う香り。日本の高音多湿の夏だと、アロマティックが籠ってしまうようにも感じる。

都会から失われつつある植物たちの美しさと強さを表現した香り。コンセプトが個性的な分、好き嫌いがはっきり分かれる香りではとも思う。

こういうグリーンを効かせたフルーティの香りでは、ジョー・マローンのブラックベリー&ベイ(2012年)が思い浮かぶ、今回はより春らしいロスト イン ザ シティを選んでみた。

 

5.キリアン:フォービドゥン ゲームズ(2012年)

正直、キリアンのフルーティ系はどの香りもみずみずしさに溢れ、複雑で色彩鮮やかな春に似合う香りが多いため、どれにするかかなり迷った結果、このフォービドゥン ゲームズにした。「禁じられた遊び」という名前のとおり、春らしい心の揺らめきが表現されている香り

まず、スプレーした瞬間のフルーティに魅せられる。爽やかなグリーンアップル、甘酸っぱいプラム、みずみずしいピーチ甘さのフルーティ三重奏。そこにシナモンがほどよいクセを与えている。

そんなフルーティミックスに、ローズの華やかさ、透明感のあるゼラニウムが奥行きを与えながら、ジャスミンバニラの官能的な甘さを濃くしていく。

見た目は少女のようなみずみずしいフルーティ、でも奥からはとろけるような濃厚なフローラル甘さ。それでも、このフォービドゥン ゲームズはフルーティな酸味がフレッシュで、官能的な甘さに溺れていかない分、春にとても似合うのではと感じる。

その果実を食べることを禁じられているからこそ、齧りたくなる。一見、ピュアで美味しそう、でも近づくと危険な甘さが漂っている。キリアンのフルーティな香りには、そういう危うさが同衾している

リエゾン ダンジェルーズ(2007年)も春に似合い、そしてフォービドゥン ゲームズ以上に危険な香りではと思う。

 

フローラル系

6.ディプティック:オーローズ オードトワレ(2012年)

ローズの水という名に相応しい、フレッシュで軽やか、みずみずしく清潔なローズコロンの香り。この爽やかなローズの香りは季節を選ばないものの、嫌みのない明るさは、特に春に似合うのではと思う。

ローズウォーターを思わせる軽やかなローズや、ライチのフルーティ甘さや酸味、さらにはカシスグリーンが爽やかなみずみずしさを与えている。この透き通るようなトップがとても春らしい。

さらにゼラニウムがローズをナチュラルに演出しつつ、清潔なソープ調で優しくまとめている。アロマティックな雰囲気もあるため、男性目線でも使いやすい

明るいローズが楽しめるのは1時間くらいで、この儚さもどこか春らしく感じる。あまりコスパは良くないけれど、春に活躍する一本だと思う。

さらにフレッシュなローズ感を楽しみたいのであれば、アラローズ(2014年)がおすすめ(こちらもコスパは悪い)。

 

7.ルイ・ヴィトン:ウール ダプサンス(2020年)

ウールダプサンスは、1927年に発表されたヴィトン初のフレグランスの名前がそのまま採用された作品であり、ベルレスピロと同様に、過去にヴィトンが所有していた別荘の名前が由来となっている。まるで別荘に周りに咲き誇る、春の花々を散りばめた、とても上品で洗練された女性らしいフローラルブーケの香りに仕上げられている。

ジャスミンサンバックのみずみずしさや、ローズの可愛らしさを、ミモザの透明感溢れるウォータリーな印象に包み込んでいく。

このウールダプサンスが素晴らしいのは、これらのフローラル素材がしっかりしているため、ブーケとしてまとまりながら、それぞれの香りもきちんと感じられる点だと思う。そこにラズベリーの甘さを添えることで、春らしいポジティブなニュアンスを加え、さらにパウダリーで上品に仕上げられている。

春の花ミモザが主役の香り。ミモザをジャスミンやローズで着飾ることで、春風のように軽く爽やかなフローラルブーケを堪能てきる香り。

 

8.ゲラン:ローズジェリー(2021年)

もし、桜の下で花見をしているときに、このローズシェリーの香りがしたら、とても素敵だろうなと思う。

なぜなら、ローズシェリーは静かではあるけれど、明るくポジティブで、胸のなかで始まりの予感が広がっていくるような香り

あらゆるローズのニュアンスを詰め込み、香りの全体像は上品で洗練されている。華やかなローズを、青さや硬さでキュッと引き締めたような香り。

具体的にはローズウォーターローズエッセンスダーマシーナローズセンチフォリアローズの多彩なローズを感じながらも、アーモンドの硬さやライチで甘さでフレッシュに縁取り、ヘリオトロープで可憐でエレガントに演出している。

このアーモンドやトンカビーンが、まるでローズに桜のような表情を与え、そっと心に寄り添ってくれる。

それはバラ色の人生に誘う、春に似合うローズの香り

 

9.ゲラン:ジョワイユーズ チュベローズ(2017年)

ジョワイユーズチュベローズは幸福(Joyeuse)なひとときを演出してくれる香り

それは、まるで朝露に濡れたようにみずみずしく、可憐で無垢、そして上品で清潔な、チュベローズの新たな一面を表現した香り。

チュベローズの個性を活かしつつ、ユリの無垢な美しさ、ジャスミンのみずみずしさを加え、さらに目が覚めるようなグリーンフルーティを合わせることで、春の陽光に似合う、フレッシュなチュベローズが創り出されている。

そこにバニラの白い甘さ、清潔なウッディムスクで包み込んだ、純白なフローラルの美しさ。

美しいフローラルの香りは数多ある。でも、ハッとするようにフレッシュで、触れるたびに幸せな気持ちに包まれるフローラルの香りは滅多にないのではと思う。

 

10.フレデリック・マル:オードゥマグノリア(2014年)

オードゥマグノリアはその名の通り、完全にマグノリアにスポットライトを当てた香り。

それも華やかなフローラルやムスクでフレグランス調に化粧したマグノリアではなく、ナチュラルなシトラスや、アーシーなウッディで前後を補うことで、マグノリアそのものを引き立たせたような香り

フレッシュなレモングレープフルーツベルガモットのビターな果皮感に、アロマティックなベチバー、そしてパチョリの土の匂いをほんのり添える。全体的にはとても軽軽い香り立ちだからこそ、マグノリアの透明感がとても映える。

そこに、クラシカルなウッディシプレを添えることで、どこか優しく懐かしい。

3~5月はマグノリアが咲き誇る季節に、それこそ浴びるように使いたい香り。

 

11.メゾン フランシス クルジャン:アクア ユニヴェリサリス フォルテ(2011年)

メゾンフランシスクルジャンの代表作アクアユニヴェルサリス。このフォルテバージョンはフローラルの磁力を十倍にして、弾けるようなきらめきと強さを増した香り。 

アクアユニヴェルサリスは、セドラの果皮感やミュゲのグリーン感が鋭く、どちらかといえば夏に使いたくなる。

このフォルテは、まるで太陽のような輝きを一気に拡散させるジャスミンを、レモンミュゲで引き締めているような、清潔なムスクで包んだ香り。でもこのジャスミンが夏の太陽だと眩しすぎる。春の爽やかな陽光の方がこのジャスミンの輝きが楽しめるように感じる。

ジャスミンの香りは太陽の陽射しにとても似合う。そんなジャスミンの香りを眩しすぎるほどに強くし、シトラスやミュゲで引き締めるとは、何ともまあ贅沢な香りだと思う。

 

グルマン系

12.コントロモア

コントロモワは、マダガスカル産バニラ抽出液、マダガスカル産バニラエッセンス、タヒチ産バニラの3つの異なる香りのバニラ素材を使用しながら、表層はフローラルやフルーティを装った香り。

フレッシュなオレンジレモン、みずみずしいマグノリア、そして華やかなオレンジフラワー。その奥に3種類のバニラが、まるで寄り添っているように香り立つ。使われているバニラ素材も軽やかで、甘さに溺れていくギリギリのところをココアで締めている。

それは予期できないフレッシュバニラの香り

コントロモワとは「もっと近くに来て」の意で、近づかないとバニラの甘さが分かりにくい。つまり自分だけが楽しめるバニラの香りは、季節を問わず使うことができる。

それでもフレッシュなシトラスや、明るいオレンジフラワーに包まれたバニラは、春にもっとも似合うのではと思う。