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メゾン クリスチャン ディオール:スパイス ブレンド

DIOR

MAISON CHRISTIAN DIOR SPICE BLEND(2019年)

調香師:フランソワ・デュマシー

おすすめ度:★★★☆☆

 

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画像出典:公式HP

 

スパイスブレンドという響きだけで、どんな香りだろうか?と好奇心が湧くような素晴らしいネーミング。さらに発売時、表参道店に飾られていた、実際のスパイスを大きなガラス容器に詰め込んだ、あのオブジェのインパクトが忘れられない(あの時、写真を撮っておけば良かった!)。

 

トップはスパイシー。

スプレーすると刺すようなピンクペッパーと、かなり土臭いフレッシュなジンジャーの香り。少し遅れてラムのまろやかな甘さがじっくりと漂ってくる。辛さと甘さのコントラストに酔いしれるようなオープニング。

 

ミドルはスパイシー・ラム。

ラムにシナモンのクセを添えた甘さを軸にして、上の方からクローブ、コリアンダー、ベイリーフなどのホットスパイシーが、そして中ほどからはピンクペッパーやブラックペッパー、ジンジャーのピリッとしたスパイシーをミックスさせた香りが広がっていく。

 

ベースはスパイシー・ウッディ。

ベイリーフを中心にしたホットスパイシーやナツメグが、ラムやシナモンの甘さを引き立たせる。そこからセダーウッド、ベチバーの淡いウッディを香らせながらドライダウンしていく。

 

ラムをキャンパス地に置き、辛いスパイス、フレッシュなスパイス、そしてシナモンなどの色とりどりのスパイスミックスを、鮮やかに引き立たせたような非常にユニークな香り。ベースのウッディが薄いため、持続時間は4時間程度。

 

甘さの上に、スパイスの刺激が入り乱れるような、秋から冬にかけて似合う香りだと感じる。

 

素材を見てみると、マルティニーク産ラムアブソリュート、マダガスカル産ブラックペッパー、マダガスカル産クローブエセンス、ドミニカ共和国セントトーマス島産ベイリーフ、ナツメグ、中国産シナモン、ロシア産コリアンダー、ジンジャーエッセンスと産地が特定された、ディオールらしいかなり素材にこだわったが使われている。

 

厳選されたスパイスたち。それらひとつひとつの個性は、ムエットであれば楽しみことができるのに対し、肌に乗せてしまうとラムの甘さが増してしまうため、それぞれの個性がぼやけてしまい、ざっくしとした辛甘い香りになってしまう。
さらに、思った以上にベースが淡いため、香りが肌に乗っかっていかないような気がする。
ひとつひとつのスパイスが繊細なため、肌につけるよりもムエットやルームフレグランスとして使用した方が、このフレグランスの良さが楽しめるのではと感じてしまう。


もっといってしまうと、スパイスブレンドという名のフレグランスが、肌に乗せるとラムの甘さに負けてしまうのはどうかと思う。もっともっとスパイシーが主張してほしかった。

 

そもそも、調香したフランソワ・デュマシーは、父の薬局の棚に置かれていたボトルに感じた幼少期のエキゾチックな記憶の風景を、香りに転写したフレグランスと述べている。
温かみ、ツンとした空気の刺激、エキゾチックな色合いなど風景から生み出された香りのため、肌よりも空間で楽しんだ方が調香師の意図がより再現されるのではないだろうか。

 

とはいえ、秋冬に映える、スパイシーを効かせ、甘さに沈んで行かない芳醇なラムのおしゃれな香り。