フレグランスアッセンブル

フレグランスの香りの変化を解析するサイト

バイレード:ブランシュ

BYREDO

BLANCHE(2009年)

調香師:ジェローム・エピネット

おすすめ度:★★☆☆☆

 

f:id:captain_dora:20211011180620j:plain

画像出典:公式HP

 

バイレードの代表作ブランシュはその名のとおり「白」を表現した香り。

真っ白い清潔感をどストレートに表現したような香りで、オンタイムを中心に使用機会はかなり多いのではと思われる。私も、以前はかなりよく手を伸ばしていた。

ところが、フレグランスを好きになってくると、こういう清潔感を売りにした香りは飽きも早く、最近はあまり使わなくなった。

 

トップはアルデヒド。

スプレーすると、粉せっけんを思わせる強いアルデヒドと、パウダリーなピンクペッパーが鼻を刺す。そこに仄かなローズを合わせた香り。ピンクペッパーを効かせたナチュラル感の乏しいライトなローズが、逆にソーピーな香りとうまく調和していているようなオープニング。

 

ミドルはフローラル・パウダリー。

粉っぽいアルデヒドを骨格に、淡く可愛らしいピンクイメージのピオニーが香る。良く言えば清潔感があり、悪く言えばファブリック的で安っぽくも映る。奥からはインドールが少し強いオレンジフラワーが香り全体に深みを持たせ、さらにバイオレットの硬質なパウダリー感が、トップと同様にソーピーな雰囲気を持続させている。

 

ベースはムスキー・ウッディ。

オレンジフラワーの酸味と、パウダリーなムスクと、乾いたセダーウッドの香り。そこからクリーミーなムスクと、サンダルウッドが全体を柔らかく包み込んだままドライダウンしていく。

 

香りは大きく変わらず、終始、白イメージのソーピーな香りが、4時間くらい持続する。

 

上質な石鹸を思わせるため、使いやすく、嫌われにくい香りだと思う。当時、バイレードの売り場に行くと、まっさきに薦められたのもうなずける。

しかし、アルデヒドやムスクの清潔な厚みに、フローラルが飲み込まれてしまい、結果、上品ではあるものの、石けんの香りの範疇を超えていない。

さらに、オレンジフラワーのナチュラルなアラが見えすぎてしまい、全体的な嗜好をそぎ落としているようにも感じる。

 

バイレードは、2006年に香りと記憶の関係に強く魅せられたベン・ゴーラムがストックホルムで創立したブランドで、創始者の私的な記憶や想像世界をコンセプトに、独創的なフレグランスを数多く揃えている。ぶっ飛んだ香りや、面白いコンセプトの香りも多い。

このブランシュは、白という色に抱く、創始者のイメージを表現した香りで、初めて実在の人物(女性)を思い描いたとされる。やはりバイレードは、創始者の記憶や創造世界から生み出された香りこそが輝くのであって、まっさきにブランシュを手にすることは避けた方が良いのではと思う。

 

白イメージであれば、バイレードらしいもっと独創的な「白」を表現できたのではないだろうか。

清潔な石けんの香りであれば、清潔プラスアルファのもっと複雑な香りや、引き込まれるようなキャラクターを付与できたのではないだろうか。

個人的には、白い香りや清潔な香りは身だしなみとしては良いと思うけれど、何もフレグランスで着飾るようなカテゴリーではないと感じている。