MOLTON BROWN
MILK MUSK EAU DE TOILETTE(2020年)
調香師:マーヤ・レヌ
おすすめ度:★★★☆☆
画像:公式HPより
ミルクムスクという名のフレグランスを見つけた時、その分かりやすさに興味がわくと同時に、名前負けしていないかなという不安を感じた。
ありそうでないシンプルさ、そしてどんな香りか連想できる名前。
そして、嬉しいことにミルクムスクの香りは、期待を全く裏切ることない、まさに名前通りの香りに仕上げられていると思う。
トップはフルーティ。
スプレーするとピーチにベリーの酸味を加えたフルーティな香り。少し遅れてペアのガスっぽさが香ってくる。
ミドルはフルーティ・バルサミック。
そこからザクロのような酸味とピーチのコクの奥から、滑らかなバニラとムスクが香ってくる。バニラとムスクのどちらも前に出ずに拮抗しているため、ミルクっぽい香りに近づいていく。
さらにその奥から、ウォータリーなフローラルがみずみずしいツヤや硬さを与えることで、ここでバニラムスクではなく、ミルクムスクの香りが完成する。
ベースはムスキー・バルサミック。
フルーティな酸味とコクを残しながら、クマリンの甘さとムスク、さらにはアンバーやウッディでミドルの印象を保っている。最後は、少しバニラやクマリンのパウダリー感が出てくるものの、ミルクのイメージをしっかり保ったままドラインダウンしていく。
オードトワレのため、持続時間は4時間程度。
ミルクのようなムスクの香りのため、真夏以外、季節を問わずに使える香りだと感じる。
全体的には、ラクトン、ムスク、バニラ、クマリンなどコクのある白イメージの香りに、ピーチやベリーの酸味に、みずみずしいフローラルのツヤが加えることで、少しだけヨーグルト感のあるミルクに仕上げられている。バニラやクマリンの甘さが立ちすぎないのがとても良い。
個人的には、このフレグランスがもっとも楽しめるシチュエーションは寝香水ではないだろうかと思っている。
コンセプトには、ミルクの優しさとムスクが絡み合い、肌と肌が触れ合うような心地よさを感じさせるとあり、リーディングフレグランスのミルクは、子供時代に認識する香りの一つであり、ノスタルジックな感情へと誘うという言葉にとても共感する。
子供の頃、怖い映画を観た後(なぜかその映画は決まってジョーズ)、夜中恐ろしさに目が覚め、母親の布団に逃げ込んだ経験がある。
甘酸っぱいような心地良い温もり。守られているような安心感があった。
ところが歳を重ねていくと誰も守ってくれない。逆に家族や生活など常に守り続けなければならない。
子供の頃に感じた、誰かに守ってもらえている安心感。夜、そんなノスタルジーにたまには浸ってもいいじゃないか。ミルクムスクの香りと共に。