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トバリ:サイプレス マスク

TOBALI

SYPRESS MASK(2017年)

調香師:不明

おすすめ度:★★★☆☆

 

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画像:公式HPより(TOBALITHOUSAND COLOURS

 
2017年にフランスで発表され、まるで逆輸入されるように、2018年に日本に凱旋帰国していたトバリ。どの作品も随所に日本らしさが散りばめられた、ジャパニーズフレグランスの名に相応しい香り達。
 
このサイプレスマスクは気品に秘める狂気を表現した香りとのこと。

娯楽であった能を芸術の域まで高めた究極の芸術家、”猿楽師、世阿弥“。優雅な<気品>と、芸を極限まで追求する<狂気>をもち、生涯を芸に捧げて追求し続けた。檜で作られた能面をつけ、舞台の上で静かに気品高く舞い、 人々を圧倒した。芸を究極まで追求し、人や動物を演じるだけに留まらず遂には目に見えない“霊的な存在”を演じるまでにつきつめ、全く新しい能である“夢幻能”を生み出し、まさに変幻自在にその姿を変えた。舞台上での気品の 舞に秘めた、凄まじいまでの芸に対する狂気的な拘り。檜の面をつけた、真に芸の極める者(公式HPより)

 
トップはスパイシー・ウッディ。
スプレーすると鋭いスパイシーが鼻を刺激する。刺すように華やかなサフランと冷たいナツメグ。そこに爽快な檜のウッディ感。さらにミルラのクリーミーな甘さを添えたオープニング。
 
ミドルはウッディ。
トップの印象を残しながら、檜の硬質なウッディ感が増してくる。そこに墨汁を思わせるハーバルな薬草感を加えた、どこか懐かし気のある和のウッディの香り。奥から漂ってくるセダーウッドの深みが、檜のフレッシュ感を引き立たせている。
 
ベースはウッディ。
鼻先は檜やハーバルの余韻を漂わせながら、メインのドライなセダーやスモーキーなインセンスが、ウッディ感をどんどん補強していく。奥からパピルスの紙のような白いウッディ調や、日本香堂と共同開発した「Hidden Japonism834」も感じ取れる。そこから、徐々にレザー調のウードが暗さと深さを加えながらドライダウンしていく。
 
最初の30分は鋭いスパイシーと調和した、爽快な檜を感じられるようなオリジナリティ溢れるウッディの香りにどこか癒される。檜にザラザラした墨汁の薬草感を加えながら、木々が色濃くなっていき、5~6時間持続する。
 
秋から冬の乾いた季節に似合う香り。色彩のない、まるで水墨画のような香り立ちで、空気が乾燥し、寒ければ寒いほど、この白と黒の色合いが映え、ベースの深みが鮮やかになっていく。
 
稀有な和テイストウッディの香り。
随所に檜や墨汁の和を感じながら、時間の経過とともにウッディフレグランスらしい深みも楽しめるような、バランス感覚に長けた、とても使いやすいだと思う。そして檜や墨汁の硬さが、荘厳な佇まい、つまりは気品を醸し出している。
それでも、狂気と言われると、首を傾げてしまう。大人しいすぎる。狂気とはこんなものではないのではと。
 
2021年の秋、トバリというブランドは突如終わってしまった。今後は、ザウザンドカラーズというブランドに生まれ変わり、幸いなことにこのサイプレスマスクは生き残った。
もし、トバリという世界観を消すことなく、極限まで追求し続ける凄まじいまでの香りに対する狂気的な拘りがあったのならば、おそらく気品と狂気という領域まで到達できたかもしれない。そう考えるととてももったいなかったと思ってしまうのは私だけだろうか。