フレグランスアッセンブル

フレグランスの香りの変化を解析するサイト

シャネル:ベル レスピロ

CHANEL

LES EXCLUSIFS DE CHANEL BEL RESPIRO(2016年 ※EDTは2007年)

調香師:ジャック・ポルジュ

おすすめ度:★★★★☆

f:id:captain_dora:20220207095625j:plain
f:id:captain_dora:20220207095717j:plain

画像:公式HP

 

ベルレスピロとは、パリ郊外にあったココ・シャネルの別荘の名前に由来している。

彼女は、春のそよ風が薫る中での昼寝を楽しみ、満開の花々で埋め尽くされた庭に囲まれながら、自然の美しさを享受して過ごしたとのことで、このベルレスピロは、目が覚めるようなグリーン、みずみずしいフローラル、そして温もりのあるウッディなど、ナチュラルな美しさで溢れている香り。

 

トップはグリーン。

スプレーすると、リーフグリーンの鋭い青さと、ガルバナムグリーンのアーシーな青さがキーンと鼻を刺す。ハンパない草感にたじろぎつつも、そのグリーンに絡まるように、ホワイトフローラルのコクのある甘さが心地よく、まるで春らしい陽光のなか、新緑や軽やかな風に包まれたような気分に誘うオープニング。

 

ミドルはグリーン・フローラル。

リーフグリーンの鋭い青臭さが飛んでいくと、ガルバナムグリーンのアーシーなえぐみや、ペチグレンの乾いたグリーンを中心に置き、その周りから明るいネロリ、ジャスミンの甘さが広がっていく。奥からはライラックのようなコクのある蜜感も香り立つ。

そして時間の経過とともに、フローラルの明るさや華やかさの方が前に出ることで、ガルバナムが土のようなナチュラル感をフローラルに添えていく。

 

ベースはフローラル・ウッディ。

ミドルのアーシーなガルバナムグリーンと、ライラックの蜜甘さ、そしてジャスミンのアニマリック(インドール)なコクを、ベチバーやパチョリが持続させているようなイメージ。

やがて、淡くなったグリーンフローラルウッディに、柔らかいムスクを加えることで、なめらかなレザーのような印象となり、そのままドライダウンしていく。

 

トップのグリーンやミドルのフローラルを、ベースのウッディムスクが支えるような構成のため、持続時間は4~5時間程度。

 

春の訪れとともに使いたくなる香り。正直、スプレーした瞬間の青臭さはかなりパンチがあり、好き嫌いが分かれると思う。それでも、この強いグリーンに乗ってくるフローラルの美しさは、春らしさに満ちている。春の素晴らしさを堪能できる香り。

 

3月から梅雨入り前、春の陽射しが温かい休日、爽やかな風や花々などの、絵に描いたような春の香りに包まれたい時に、これほど似合う香りは見当たらないのでは思う。新緑のなかで、日向ぼっこをしているような至福の時間を過ごすことができる香り。

この香りの素晴らしいところは、ナチュラルな香りに包まれながら、肌の近いところからは、シャネルらしい洗練された香りが寄り添うことで、例えばスエット姿で近所の公園で過ごすのではなく、きちんと正装して別荘地を散歩するような洗練さも味わえる点ではないだろうか。

 

ナチュラルな春の香りは数多ある。

でも、ベルレスピロのような、春らしい爽やかな自然のなかに身を委ねながら、洗練された雰囲気も感じられる香りはなかなかない。

春は短い。まして、晴れた休日などかなり貴重だ。ベルレスピロはそんな貴重な日々を上品に彩ってくれる、グリーンフローラルの傑作だと感じている。