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ザ ディファレント カンパニー:セル ド ベティベル

THE DIFFERENT COMPANY

SEL DE VETIVER(2006年)

調香師:セリーヌ・エレナ

おすすめ度:★★★★☆

 

画像:公式HP

 

セル ド ベティベル(ベチバーの塩)は、ユニークなベチバーの香りだと思う。

ベチバーの素材をしっかり感じながら、さりげなく太陽や塩、そして鮮やかな花の気配が広がっていくような香り。

「空気が海から上がると太陽が照りつけて海水が蒸発していく、そしてやわらかな肌に残る塩。甘さと塩の香りの調和は野性的で神秘的(HPより)」という言葉に嘘偽りのない、肌から香り立つ太陽の熱、塩味、フローラルの甘さに包まれたベチバーの香りだと思う。

 

トップはスパイシー・シトラス。

スプレーすると、カルダモンのややスモーキーな刺激が鼻を刺す。少し遅れて爽やかなグレープフルーツのほろ苦い甘さ、そしてアロマティックなベルガモットが、先行する刺激を整えていくようなオープニング。

 

ミドルはウッディ・アロマティック。

カルダモンの埃っぽさに誘われて、とてもアーシーなベチバーが力強く広がっていく。そこにやや辛めのゼラニウムがベチバーの土っぽさを硬くコーディングしながら、アロマティックな厚みを加えていく。

かなりメンズライクなアロマティックウッディの香りと思いきや、奥から潮風に包まれたようなイランイランが、硬質なベチバーを優しくときほどいていく。男性らしさと女性らしさが肌の上で溶け合うような、とてもユニークなベチバーの表現だと思う。

 

ベースはウッディ。

鼻先は塩っぽさを含んだアーシーなベチバーを香らせつつ、奥からはフローラルの明るさに包まれた柔らかいベチバーが香り立つ。そのイランが上の方に立ってくることで、ベチバーのアーシーな部分と重なり、さながら太陽の光で反射するベチバーのようにも感じられる。実際に肌に乗せると、太陽の光を浴びた肌の熱や塩の匂いがする。

そんな明るいベチバーを漂わせながら、パウダリーなアイリスが再びベチバーにメンズらしい落ち着きを与えたままドライダウンしていく。

 

最初の1時間はアロマティック強めなベチバーの香り。そこから2時間くらい明るさをまといながら、最後は静かなベチバーの余韻が4~5時間持続する。

 

ベチバーを効かせた香りは、春夏に似合う香りが多い。そのなかでもこのセル ド ベチベルは塩っぽさやフローラルが添えられている分、春や夏に特に似合うと思う。

 

セル ド ベティベルはシコモアと重なる部分がある。

ともにナチュラルなベチバーを中心にドンと置き、アロマティックなベチバーから、柔らかく雄大なベチバーに流れていく。セル ド ベティベルの方がベースのウッディ部分が軽く、フローラルの明るさもあり社交的だ。シコモアは静かで内省的、そして安心感がある。それぞれ個性がしっかりしている。

 

セリーヌ・エレナはその若々しい感性で、ベチバーの軽さや透明感を表現したとのこと。

それは、肌と調和していく塩とフローラルの輝きが導きだした、美しくも新たなベチバーの香り。