CHANEL
LES EAUX DE CHANEL PARIS-DEAUVILLE(2018年)
調香師:オリビエ・ポルジュ
おすすめ度:★★★☆☆
画像:公式HP
レ ゾー ドゥ シャネルは、マドモアゼル・シャネルが愛した土地からインスパイアされたフレグランス コレクション。ドーヴィルはヴェニス、ビアリッツと共に最初の作品として、2018年に発表された。
ドーヴィルは、1913年にシャネルが自身初のファッションブティックをオープンさせた場所で、このノルマンディー海岸のリゾート地でもあり、牧歌的な田園地帯を、フレッシュなシトラスやグリーンで表現した作品とのこと。
トップはシトラス・スパイシー。
スプレーすると、レモンライムのフレッシュな果皮感や、オレンジのジューシー甘さ、さらにベルガモットのみずみずしい酸味。それらシトラスミックスの明るさを、ピリッとしたバジルのアクセントや、ペチグレンで引き締めている。ここだけ見ると少しメンズライクであるものの、スプレーした瞬間から、シトラスの鋭さを(このコレクションに共通している)ムスクで柔らかく装飾することで、鋭さに丸みを持たせたフレッシュシトラスの香り。
ミドルはグリーン・ウォータリー。
香りの先端ではバジルを効かせたレモンライムやオレンジを残したまま、ベルガモットに包まれた爽やかなグリーンノートが広がっていく。ベルレスピロとまではいかないものの、かなりグリーンは強い。
奥からはジャスミンのウォータリーな部分(ヘディオン)が、グリーンに水滴を含ませたようにみずみずしさを与えていく。そこにいかにもシャネルらしい、ジャスミンやローズを添えることで、香り全体はどこかエレガントな趣きだ。
ベースはシプレ。
そのウォータリーなグリーンノートを残した、淡いジャスミンシプレの香り。少しフローラルなオゾン要素も感じられる。そこに時折顔を覗かせるピーチローズが重なると、あのココマドモアゼルにも似ている。
最後はウォータリーの残香と柔らかいシプレと淡いムスクの香りでドライダウンしていく。
肌に乗せてみると、最初のフラッシュなシトラスは弾けることなくグリーンと調和していく。ここまでは1時間くらい。そこから、みずみずしいウォータリーシプレを強め、全体では3時間くらい持続する。
気持ちのいいシトラスやグリーンを主体とした、春や夏に似合う香り。シャネルが得意とするフローラルやシプレはあくまで助演に徹し、淡く軽やかに香るため、晴れた日の日中に特に映えるのではと感じる。
このパリ ドーヴィルは最初、物足りなく思っていた。でも今ではとてもバランスの取れた香りではと思い直している。
レ ゾー ドゥ シャネルにはすべてパリの地が付けられている。それはパリからの移動の途中なのか、それともパリにてドーヴィルでの記憶を思い巡らしているのか。
ドーヴィルの香りは、ノルマンディー海岸や牧歌的な田園風景だけではなく、パリらしさも伝わってくる。例えば、バジルやグリーンを効かせたシトラスの香りは数多い。でもリゾート地ドーヴィルでの記憶をなぞりながらも、洗練されたパリの空気感も伝わってくる香りはなかなかなく、加えてドーヴィルは随所にシャネルらしさまで散りばめられている。
夏の平日の昼下がり、疲れた気持ちを整えるため、ドーヴィルを1プッシュスプレーしてみる。憧れのパリの街並みと、リゾート地ドーヴィルに思いを馳せながら。