GUERLAIN
L'OMME IDEAL COOL(2019年) ※廃番
調香師:ティエリー・ワッサー
おすすめ度:★★☆☆☆
画像:FRAGRANTICA
ロムイデアル クールは(私が偏愛している)ロムイデアル コローニュ(2015年)と入れ替わるように、シリーズの第6作目として発表された。このクールが発売された時、コローニュが廃番となり慌てたことと、何も罪のないライトグリーンの液色の美しいボトルを恨んだことを思い出す。
クールのコンセプトは「理想のフレグランス」。どんな時にもクールに構え、いつも笑顔を絶やさない。そんな男性の願望に応え、理想のエッセンスを詰め込んだ、チャーミングな男性を表現したエレガントで爽やかな香りとしている。
そして私は、まあコローニュの後継だから大きく外さないだろう!と期待を込めて、取り合えず購入し、何回か使用した結果、理想と現実のギャップを突き付けられ、笑顔が消えていったことを、そしてコローニュをストックしていったことを憶えている。
トップはミンティ・アロマティック。
スプレーすると、まるで歯磨き粉のような強いスペアミントと、アロマティックなアーモンドの香り。落ち着いてくるとベルガモットやオレンジのシトラスも見えてくる。ほんのりと顔を出す、アニスがアロマティックにツヤを与え、とても気持ちの良い滑り出し。
ミドルはアロマティック・グリーン。
スペアミントのグリーン部分を残しながら、フレッシュ感が減退したアーモンドと入れ替わるように美しいネロリの香りが上の方に立ってくる。ここまでが10〜15分くらい。
ところが徐々に雲行きが怪しくなってくる。アーモンドやウォータリーが一気に乾いていき、アルデヒド特有のカサカサした暗さが、ミントの残香と合わさることで、苦みが強くなっていく。
ベースはウッディ・アンバー。
ミントのグリーンや乾いたアロマティックの香りを残しながら、こちらもドライなベチバーが包み込んでいく。アンブロクサンは柔らかさを加えるものの、クマリンの粉っぽい甘さを立たせたままドライダウンしていく。
大枠の構成はコローニュに似ている。アロマティックなアーモンドを中心に、シトラスネロリ、ほんのり甘いクマリンとベチバーなど。
ところが他のロムイデアルシリーズと比較して、トップからミドルの比率が高いコロンのような骨格のため、時間が経つにつれて香りが粗くなっていく。さらにミントのえぐみが強すぎるため、アルデヒドのカサカサした重さを助長してしまう。コローニュのようにムスクでまとめることもない。
アーモンドと強いスペアミントの組み合わせはとてもユニークなだけに、もっとコローニュに寄せれば良かったのにと思う。クールさが鼻に付き、チャーミングな笑顔が引きつって感じる。
このレビューを書くにあたり、もう一度クールの香りを試そうと思ったけれど、見当たらない。もしかするとこんなところにはいたくないと逃げ出したのかもしれない。
そして発売してわずか2年でゲランからも去ってしまった作品。