MEDITTOROSA
TALENTO(2019年)
調香師:アメリ・ブルジョワ、カミーユ・シェマルディン
おすすめ度:★★★★☆
画像:公式HP
メンデットローザは、2013年にイタリアのナポリ生まれのステファニア・スクエリアによって設立されたフレグランスブランド。
香りを通して魂に触れることを目的に、嗅覚だけでなく、視覚にも訴えかけるように、木箱やボトル、キャップを1点1点すべてイタリアの職人によるハンドメイドで制作している。作品の主題をオブジェとしても具現化することにこだわることによって、ブランドの美的なディティールを強烈に主張しているとのこと。
そして、このタレントのコンセプトは次のとおり。
脆弱なバラの花瓶にミントを落とすと、屈強な青葉が花を優しく包み一体となった。大切にされれば花開き人生を豊かにしてくれるのが才能。終末の時、神に伝えたい。授けられた才能すべてを活用し切ったことを。
とても素敵な言葉だと思う。
トップはミンティ・アロマティック。
スプレーすると、ミントのツーンとした冷涼感と、軽やかなローズの甘酸っぱさ。この軽いローズこそ、CO2抽出したローズだと思う。
ミントローズに誘われるようなゼラニウムのアロマティックな硬さと、その周りをアルデヒドで包むことで、柔らかくも清潔に仕上げられたオープニング。
そして肌に乗せると、ミントローズとアルデヒドの組み合わせが、どこかラムネを思わせるような、ノスタルジーを感じる。
ミドルはローズ・マロマティック・グリーン。
先端は、クラシカル調のアルデヒドローズをキーンと冷やした香りで、ピンクイメージのローズをキュッと引き締めたようなイメージ。
中ほどは、ミントのグリーン部分をゼラニウムがどんどん硬くしていく。このアロマティックグリーンに、オークモスがメタリックにコーティングしたような香り。冷たくも軽やかなローズミントの甘さを香らせながら、アロマティックなグリーンに、マリンやアニスのような香りをほんのりアクセントとして添えられている。ここまでが1時間くらい。
奥の方では、クラシカル調のシプレやアンバーが見え隠れする。このミドルは3~4時間持続する。
ベースはアロマティック・シプレ。
みずみずしいローズミントの甘さが緩やかに収まってくると、キーンとしたオークモスを効かせたシプレが、冷たい印象を残していく。
最後はパチョリやアンブロクサンやセダーウッドのシプレウッディが、冷たさを柔らかく包み込むようにドライダウンしていく。
ゆっくりと香りを変化させながら、6時間以上しっかり持続する。
アルデヒドを効かせた、ややクラシカルな面影のローズシプレの骨格に、ミントの葉をすり潰したような強いグリーンや硬質なアロマティックを融合させたユニークな香り。
ミントの青さが特徴でもあり、春から夏にかけて、また、秋口の空気が湿った雨の日にも、とても似合う香りだと感じる。
このローズとミントのバランスがとても繊細なため、空気が乾いた春ではローズやミントがフワッと香り、湿度の高い夏ではグリーンの苦みや重厚なアロマティックが前に出る。春先は軽やかに明るく、夏場では力強いグリーンが少しメンズライクに香る。
脆弱なローズに見出だした、新しいローズの姿。
本来であれば、ローズの輝くばかりの華やかさを表現したいと考えるのではと思う。
ところが、タレントでは輝きが褪せたローズにスポットライトを当て、華やかなローズとは別の可能性を開花させている。脆弱なローズは青葉と合わさることで、咲き誇る前の若々しさと、ピークを越えた落ち着きが共存している。
素材がほとばしらない分、安心して使うことができる、上品なローズの軽やかさとみすみずしさ。
素材が秘めている才能と、それを引き出す才能。タレントは、ローズの可能性に留まることなく、フレグランスが持つ可能性の大きさを教えてくれる。