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ゲラン:ベチバー

GUERLAIN

VETIVER(1959年)

調香師:ジャン=ポール・ゲラン

おすすめ度:★★★★☆

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画像:公式HP

 

ゲランのメンズの代表作ベチバー。元々ゲランでは、希釈したベチバーを提供していたらしく、これがメキシコで長年ベストセラーフレグランスなっていたとのこと。そして、ジャン=ポール・ゲランはこの香りからインスピレーションを受けて、新たなベチバーの香りを創り出したとされている。

 

尚、現在のベチバーは2000年にリニューアルされた香りである。

 

トップはシトラス・スパイシー。

スプレーすると、ゲランらしいクラシカルな佇まいのあのベルガモットから、フレッシュなレモンやオレンジが弾ける、爽やかなシトラスミックスの香り。そのシトラスに添えられたネロリがとても明るく、シトラスのフレッシュさを際立たせている。

一方では、ナツメグやコリアンダーのピリッとした冷たさに、ビターなタバコやペッパーが絡みあうことで、クラシカルなトーンも強く感じされるオープニング。

 

ミドルはアロマティック・ウッディ。

鼻先では金属音のようなキーンとしたシトラスを香らせながら、アーシーでスモーキーなベチバーの存在感が増していく。そこにセージやカーネーションを含ませることで、アロマティック感も強い。さらにタバコやペッパーの渋みが男らしさを演出している。

やがてキーンとした部分が収まってくると、アイリスの根(オリスルート)がベチバーのウッディ部分に深みを与えていく。このあたりの香りはトムフォードのグレイベチバーと重なる。


ベースはウッディ。

そんな乾いたベチバーに、オークモスを加えることで、さらに渋みが強くなっていく。でも渋さに沈んでいかない。

奥からはレザーやシベットの籠った深みや、トンカビーンの甘さも香ってくる。全体的にはベチバーのアロマティックウッディや、オークモスのクラシカルな印象をはっきりと香らせながら、ドライダウンしていく。

 

前半1.5時間はシトラスやスパイシーや効かせたフレッシュベチバーの香り。中盤にアロマティックなベチバーを置くことで、後半のウッディの深みへの橋渡しになっている。オードトワレであるが、ベースもしっかりしているため、全体では6時間近くも持続する。

 

フレッシュベチバーは春夏にとても似合う。キンキンした金属音が強いものの、タバコやスパイスが落ち着いているため、このフレッシュさがとても心地良く映る。後半はベチバーのアロマティックな余韻やオークモスが、ウッディの深みを和らげているため、暑苦しくない。春夏秋に活躍する香りだと思う。

 

全体的な構成を見てみると、ベチバーが持つ二面性がうまく表現された香り。アーシーやアロマティックなみずみずしさをフレッシュに研ぎ澄ませ、ウッディの深みやアロマティックな硬さをアイリスで柔らかく整えた香りで、ベチバーが持つ大地のようなフレッシュさや温かさ、それぞれを感じ取ることができる。

 

そこにビターなタバコやスパイス、さらにはオークモスで味付けすることで、かなりクラシカルな渋みや大人らしい風格が備わっている。爽やかさや若々しさと、クラシカルやビターとの二面性も表現されているのではと思う。このクラシカルな大人らしい落ち着きがとてもゲランらしくもあり、反面、おじさんくさいと感じるかもしれない。

 

先にも挙げたグレイベチバーは、ベチバーの持つ二面性を踏襲しつつ、余分な?クラシカルな渋みを削ぎ落とすことで、とても現代的でスタイリッシュなベチバーの香りに仕上げられている。

例えば、30代半ばまでがグレイベチバーだとすれば、40代半ば以降はゲランのベチバーの落ち着いた雰囲気の方が使いやすいのではと思う。