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ル ラボ:ミルラ 55

LELABO

MYRRHE 55(2023年)

調香師:不明

おすすめ度:★★☆☆☆

 

画像:公式HP

 

ミルラ55について、公式HPを読むと「ダークでエレクトリック、古くて、新しい。 まさに上海のような存在」と、非常に分かりにくいコメントを出している。一体どんな香りなのだろうか。

 

トップはスパイシー。

スプレーした瞬間、クローブやカルダモンが入り混じったようなスパイシーの刺激が、ほんのり鼻をくすぐる。その背後から、おそらくミルラであろう樹脂っぽい酸味、さらには湿ったウッディ感がフワッと漂うような、捉えどころのない、どこか神秘的なオープニング。

 

ミドルはフローラル・シプレ。

そんな香ばしい樹脂感に包まれながら、ジャスミンの存在感が広がってくる。トップのスパイシーなトーンと調和した、かなり酸味の強いジャスミンの香り。

その奥から、ジャスミンの少しウォータリーなもったり甘さと、アニマリック味を帯びたパチョリが見えてくる。とはいえ、スプレーした瞬間から、ミルラの樹脂っぽさで霧に包んだように、香りの境界線を曖昧にしている。前半の主役はジャスミンで、ここまでが2時間くらい。

時間の経過とともにパチョリが強くなってくる。パチョリそのものは、ムース ド シェーヌ 30(アムステルダム)のそれと似ている。そこにジャスミンやミルラの酸味が加わることで、ルラボがいうネオシプレの香りと重なる。そこからパチョリが際立っていくと思いきやムスク、スモーキーなウードが、またもや香りを曖昧にしていく。

 

ベースはムスキー・ウッディ。

やがて、中心にいたパチョリの硬いトーンが落ち着くと、ムスクの印象が強くなってくる。そのムスクの白いトーンと、ウードやアンバーグリスを合わせた、どこかマニマリックでダークなトーンが交互に、そして延々と続いていく。

 

かなりミドルやベースの比重高めの香り。トップはほとんどなく、ミドルのジャスミンやパチョリまでが4時間、全体ではしっかり8時間以上かけて、緩やかに変化していく。

そういうボトム重視の香りのため、この香りが似合うのは晩秋から真冬にかけてではと感じる。

 

それにしても、なぜミルラというあまり強く主張しない素材を上海のコンセプトにしたのだろうか。

ミルラ55は、ルラボ史上最多の「55」の香料原料で構成されている。じっくりかぎ込んでみると、ジャスミンやパチョリを中心に、個性強めのキャラクターが交互に迫ってくるような香り。

それらの個性をしっかり感じさせながらも、ミルラがそれぞれを輪郭を霞ませて、それでも全体を俯瞰すると、なんとなくミルラとしてまとめられているような香りだと思う。

捉えどころのない、清濁併せ呑んだ香りであり、正直、このミルラ55はどういうシーンで使えば良いのか見い出しにくい。

 

近代史を振り返るまでもなく、上海は政治経済文化が交錯する都市。様々な異文化が入り混じっても、上海という街がもつ雰囲気は決して変わない。そういう空気感をミルラに託したのかもしれない。