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ルイ・ヴィトン:レ サーブル ローズ

LOUIS VUITTON

LES SABLES ROSES(2019年)

調香師:ジャック・キャヴァリエ

おすすめ度:★★★★☆

 

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画像出典:公式HP

 

レサーブルローズは、オンブレノマド(2018年)に続く中東シリーズの第2弾として発売された。レサーブルローズとは砂漠の薔薇の意で、光が全くない暗黒の砂漠に、朝日が射した時の輝きをイメージした香りとのこと。

 

トップはスパイシー・ローズ。

スプレーすると、ピンクペッパーの明るめな刺激が鼻を刺し、そのすぐ後ろからサフランと調和した棘のあるローズが鋭く拡散する。よく鼻にする華やかなスパイシーローズ系の香り。ところがさらに奥から、かなりアニマリックで湿ったウッディがじんわりと香ってくる。ディオールのウードイスハパンを思わせるオープニングだ。

 

ミドルはローズ・ウッディ。

サフランの華やかさを添えた、グラース産ローズドメイの上品なフローラルの存在感が増していく。そのローズの輝きを、ウードのずっしりと重く、そして暗い香りが覆い隠してしまいそうなイメージ。ジャック・キャヴァリエが魅せられ、山ごと購入したというバングラデシュ産のウード。ウード部分をじっくりかぎこんでみると、今までかいできたウードと比べて、アニマリックかつ、タールのようの湿気や重さが強い、深みのあるウッディの香り。
そこからローズがウードに覆われて、暗く沈んだ香りになりそうであるが、ローズより先にアニマリックなトーンが収まっていく。衝撃的だったあのルラボのウード27の、トップはアニマル全開なのに、30分くらいでアニマルが馴染むように消えていくイメージに近い。
そして、ウードよりもダマスクローズオイルの甘さやアンバーグリスの明るさが少し前に出ることで、ウードの暗さに光を与えたような印象を受ける。個人的にはこのあたりの香りがもっとも好きだ。
ウードのアニマルからウッディへの香りの変化に対して、ローズドメイとローズオイルを合わせることで、ウードとローズをうまく融合させた素晴らしいローズウードの香りが樂しめる。

 

ベースはアンバーグリス。

ローズの輝きが減退してくると、アンバーグリスの少し硬さのあるムスク調の香りを軸に、ウードのお香的な残香が、静けさや落ち着きを与え、その静寂な香りが延々と続きながらドライダウンしていく。

 

持続時間は、華やかなローズとマニマリックなウードの情熱的な香りが1時間弱、そこあからローズの輝きが増し、さらにアンバーグリスがウードをグレー色に薄めたような香りまでが3~4時間、そしてお香を思わせるような柔らかく静けさのある香りは丸1日持続する。

 

ローズウード系の香りは、派手なローズと重厚なウードのコントラストによって、ローズはより華やかに、ウードはより暗くなったような香りが多い。

一方、レサーブルローズは、トップはサフランローズは華やかさが強いものの、それ以降はローズはやわらかな甘さを増し、ウードはアンバーグリスによって丸みを帯びていくため、全体的にみればとても静かなローズウードの香りに。秋冬の特に夕方以降に似合う香りだと思う。

 

とはいえ、トップはかなり華やかで、アニマリックな香りも拡散するため、手軽に使えるフレグランスではないと感じている。付ける度に緊張するような、覚悟が求められる香りだと思う。

上半身に使うとたじろいでしまうくらい攻撃的なウードが前に出るが、下半身に使うと深みのあるローズウードがきちんと立ってくれる。狙い通り香ってくれると、フレグランスジプシーを魅了してやまない、砂漠に秘められた魔法のような香りになる。

 

そして、何といってもレサーブルローズは、ヴィトンらしい最高品質かつ希少なマテリアルを堪能することができる。グラース産ローズドメイ、バングラデシュ産ウード、そして天然のアンバーグリス。それぞれローズデヴァン、オンブレノマド、アフターヌーンスイムで使用されており、そのマテリアルの確かさは折り紙付きだ。

 

夜、レサーブルローズの香りを忍ばせ、街を歩く。ウードやアンバーグリスが夜の空気に溶け込みながら、ローズの輝きをそっと照らす。闇夜や肌をワントーンだけ華やかにする上品なローズウードに包まれる。