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シャネル:ベージュ パルファム

CAHNEL

BEIGE PARFUM(2014年)

調香師:ジャック・ポルジュ

おすすめ度:★★★★★

画像:公式HP

 

ベージュ色について、ココ・シャネルはこう述べている。

ベージュに安心感を覚えるのは、それが自然な色だから

 

なぜジャック・ポルジュはベージュ色が持つ「安心感」や「自然」を、このフローラルの香りに託したのだろうか。

2022年冬に復刻したパルファム(香水)の香りに触れてみて、ようやく自分なりに理解できたと思う。

 

フラコンで1滴、手首に乗せてみる。

トップはフローラル。

爽やかなフローラルがフワッと広がる。この青みを含ませたフリージアを先頭に、もう少しトロピカルな色味を帯びたフランジパニ(プルメリア)、そして西洋サンザシのナチュラルなフローラル感が追いかけてくるイメージ。

花粉を思わせるフローラル味が強いにもかかわらず、奥からゆっくりと立ち上がってくるハニーが、花にみずみずしさや蜜甘さを与えることで、それぞれのフローラルがブーケとなって折り重なるようにまとまり、「このうえなく美しいブレンド」となって花開いていく。

 

ミドルはフローラル・ハニー。

ハニーのまろやかな甘さが花の芯にツヤを与え、純白からゴールドの輝きを纏い広がっていく。

時間の経過とともに、フローラルの輝きからベージュ色に落ち着き、ハニーが寄り添うようにやわらかく包み込むことで、フローラルの心地よさを誘ってくれる。

 

ベースはフローラル・パウダリー。

少しずつフローラルのオイルが本来持つワックスのようなコクが出てくる。上の方ではハニーがそのコクをフローラルのシルエットとして留め、底の方ではパウダリーなバニラや仄かなウッディやムスクが陰で支えるように、なめらかなフローラルとしてまとめ、そのままドライダウンしていく。

 

フローラルを骨格に、前半1時間はゴールド色に羽ばたき、そこから徐々にベージュ色に移ろいながら5時間くらい持続する。

 

主役のフローラルに強い個性や色味を持たせていないため、あまり季節を問わない香りだと思う。夏にはプルメリアの色彩が、秋には花の蜜感が、冬にはハニーの心地よい甘さがそれぞれの季節と調和する。それでも冬の終わりから春にかけてこそ、この煌めくフローラルの香りがもっとも映えるのではと感じている。

 

 

ベージュオードゥパルファムと比較すると、パルファムはフローラル部分が相当分厚くなっている。EDPのフローラルとハニーがそれぞれ主張する香りに対して、パルファムではハニーはフローラルの奥に隠れている。そうすることで、ゴールド色の輝きよりも、ベージュ色の安心感や自然味が体現されていると思う。

 

パルファムが持つこの安心感と自然。

ベージュのフローラル部分はかなりフェミニンな香りにもかかわらず、とても使いやすい。フラコンかつパルファムのため、香りが拡散しない点はもちろん、ハニーやバニラが前に出すぎず、いわゆる香水チックに仕上げることなく余白を残している。香りもあまり変化しないフローラルのシングルノートというのも大きいのでは。

例えばウエストにダービーのようなクラシカルなメンズの香りを付けていたとしても、見事に調和し、ナチュラルなフローラルの輝きとベージュ色の安心感を添えてくれる。

 

まさに「本来の自分と向き合い、心安らぐ場所に誘われるような輝き感のある香り(公式HP)」ではないだろうか。