MAISON FRANCIS KURKDJIAN
AQUA CELESTIA FORTE(2018年)
調香師:フランシス・クルジャン
おすすめ度:★★★★☆
(公式HPより)
メゾン フランシス クルジャンの代表作のアクアシリーズ。
個人的には、このアクア セレスティア フォルテがアクアシリーズの最高傑作だと感じており、2021年にコロンフォルテシリーズが加わり、全9作品となってもその評価は変わらない。
他のアクアシリーズは強いシトラスでアクア感を表現していたが、このセレスティアではアクアそのものをど真ん中にドンッと置いて、シトラスやグリーンやフローラルで整えているため、もっともアクアらしく、もっともキャラクターの強い香りに仕上げられていると感じる。
トップはシトラス-グリーン。
非常にすっきりしたレモンライムと、冷たさのあるミントグリーンの香り。この冷涼感のあるグリーンが、ライム特有の苦味のある果皮感に寄らずに、爽快感を際立たせているため、そのコントラストでシトラスやがキレイに弾ける。爽やかでとても気持ちの良いオープニング。
ミドルはグリーン-アロマティック-フローラル。
そのトップの冷たいグリーンシトラスをしっかり香らせながら、シトラスの爽快感や酸味を合わせたようなペチグレンが一気に拡散する。このプチグレンはイタリア産プチグレンビガラードとあり、その名前のとおり、プチグレンの枝のウッディ感を削ぎとって、よりグリーン感を立たせるため、まるで煮出したような強いグリーンノート。とても個性の強い素材だと思う。
そのグリーンに負けないように、アクア寄りのアロマティックノートを、カシスアブソリュートの甘さの削ぎとったみずみずしいグリーンや、ミモザやジャスミンのみずみずしいフローラルで着飾った香りをぶつけている。シトラスグリーンと、アロマティックフローラルを力技でまとめたような香り。
全体的なトーンは、その強いグリーンアロマティックを、すっきりとしたフローラルフルーティで透明感を与えたような香り立ちで、コンセプトの「青い空と海を隔てる太陽のまばゆい輝き」がうまく表現されていると思う。
ベースはムスキー。
ミドルのアロマティックフローラルの酸味とムスクに、うっすらとドライなウッディアンバーの香り。このフローラルの酸味が、トップから連なる爽やかな印象をキープしている。
実際に肌に合わせると、このトップの爽やかな印象をキープしたまま、6時間くらい持続する。
フォルテの1年前に発売されたオードトワレも、かなりミントを効かせた涼しげな香りだったが、「まるで月にかかる靄のよう」な淡い香りで、ウォータリー感やパウダリーなミモザとムスクがそれぞれバラバラに見える時もあり、やや未完成の感があった。
満を持して発売されたフォルテは、冷たさのあるグリーンシトラスと、その印象を引き立たせるように何層にも厚みを持たせた香りに仕上げられている。これだけ涼しげで爽やかな香りでありながら、ミドル以降も涼しげな印象を崩さずに、弾けたように拡散する稀有な香りだ。
アクアフォルテシリーズは、どれも拡散性が非常に強い。なかでもこのセレスティアの拡散性はずば抜けている。
日本の夏は暑い。まるで熱が身体にへばりついてくるような、じめっとした暑さだ。セレスティアフォルテは、そんな不快な暑さをねじ伏せるような強さがあり、まさにフォルテの名を体現した香りだと思う。
しかし、寒く乾燥している時期に使うと、シトラスやグリーンやアロマティック感が、冷たく鋭い空気を増幅してしまうためか、とても男っぽい香りになってしまう。夏場にこそ活躍できる香りだと痛感する。
清々しい春の時間は短いのに、不快指数の高い梅雨から夏の期間は長い。春の終わりにげんなりするのではなく、特に不快な梅雨時の気温の高い日に、このアクアセレスティア フォルテで、爽快なみずみずしい冷たさに包まれていたい。