・MAISON FRANCIS KURKDJIAN
・PETIT MATIN(2016年)
・調香師:フランシス・クルジャン
・おすすめ度:★★★★☆
(公式HPより)
プティマタンは、フランシスクルジャンの良い面が出た作品で、まるでパリの早朝の空気の機微に触れているような心地よさがある。
フランシスクルジャンには朝(MATIN)と名の付くフレグランスが3作品ある(夕方(SOIR)も3作品ある)。
- COLOGNE POUE LE MATIN(2009年) 日本取り扱いなし
- ABSOLUE POUR LE MATIN(2010年) 日本取り扱いなし
- PETIT MATIN(2016年)
3作品ともにハーバルをしっかり効かせたシトラスの香りであるが、この早朝という名のプティマタンは傑出した出来栄えで、いくつか持っているクルジャンの香りのなかでもっとも手を伸ばす香り。
その理由は、プティマタンには暑苦しさを助長させる要素がまったくなく、高温多湿な日本の夏の不快感を和らいでくれるから。
トップはシトラス・ハーバル。
スプレーすると、とても清々しいレモンに、ほんのりオレンジの甘さが重なり、どこかレモネードを思わせるシトラスの香り。そこにキリッとしたラバンジンのハーバルが、香り全体を引き締めているため、早朝の少し冷えた空気感が表現できているように思える。コロンやアブソリューと比較して、このハーバルが硬くなりすぎず、とにかく気持ちの良い香り。
ミドルはアロマティック・フローラル。
レモンの爽やかさやハーバルの硬さに、キラキラとまぶしいオレンジフラワーが重なる。そこからラベンダーのアロマティック感が、オレンジフラワーを透明に包み込んでいく。ハーバルな硬さと、アロマティックなみずみずしさをまとったオレンジフラワーは、まさに早朝の淡い太陽の光をイメージするような香りに感じる。
ベースはムスキー・アンバー。
ハーバルや、オレンジフラワーのスパイシーグリーンの残香が少し薬草のように感じられる。そこから、ぬくもりのあるアンブロクサンと、グリーンがかった硬質なムスクが香る。さらにラベンダーに含まれるクマリンのほんのりした甘さが熱を帯びてきた太陽の匂いのように感じ取れる。
持続時間は4~5時間程度。
朝、ウエスト周りに1~2プッシュ重ねてみると、昼過ぎでも時折、ハーバルの硬さと、ムスクやアンバーやクマリンの柔らかな甘さの絶妙なコントラストが香り立つ。夏場、体からどこまでも透明で淡い香りがフワッと漂うと瞬間、とても心が安らぐ。
パリには行ったことがない。
パリの気候は、梅雨がなく、乾燥しているので、夏はさわやかで過ごしやすい。7・8月の日中は30℃前後になる日もあるが、朝晩は肌寒いこともあるとのこと。
と考えると、このプティマタンの香りは冷えた空気の硬さと透明感、澄んだ太陽の光が伝わってくるため、これがパリの街の早朝なのかなと想像しながら、その香りに浸ることが、夏のささやかな楽しみでもある。