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アトリエコロン:セドラ エニヴロン

ATELIE COLOGNE

CEDRAT ENIVRANT(2013年)

調香師:ラルフ・シュヴィーガー

おすすめ度:★★★★☆


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画像出典:公式HP

 

夏の香りといえば、アトリエコロンの香りを忘れてはいけない。残念ながら日本から撤退してしまったが、「コロン・アブソリュ」をコンセプトとした、非常に完成度の高いシトラスの香りを多く揃えている。

 

コロン・アブソリュとは、コロンのフレッシュ感と、持続性や奥行きを両立させた香りで、アトリエコロンが得意としている技術だ。

 

なかでも、レモン、ジン、シャンパンのはじけるフレッシュテイストが魅力のフランスでポピュラーなカクテル「フレンチ75」からイメージされたというセドラエニヴロン(陶酔のセドラ)は、アトリエコロンのシトラス群のなかでも、もっとも爽快でビターなシトラスの香り。

 

トップはシトラス。

スプレーすると、爽快で酸っぱいレモンと、ビターなライムが合わさることで、弾けるようなフレッシュ感と苦みの効いたシトラスが香り立つ。まるでレモンを皮ごと絞ったような香りで、このトップの香りをかぐだけで、暑さも5℃くらい和らいで感じてしまう。

 

ミドルはグリーン・スパイシー。

とはいえすぐにフレッシュなシトラスは果皮感を残して収まってしまうが、その果皮の香りに、ジュニパーベリーやミントでアロマティックな冷涼感が足されることで、まるでモヒートのような香りに感じる。そこにバジルのピリッとしたスパイスを加えることで、トップに似たようなビターな爽快感を取り戻している。

 

ベースはバルサミック・ウッディ。

果皮を思わせるバジルの残香に、エレミの強い酸味やと、さらにトンカビーンでレモンの綿のような甘さを再現することで、レモンの甘皮のようなシトラス感に装っている。最後はさらにベチバーの硬質な香りが、さらにシトラス感を持続させたままドライダウンしていく。

 

シトラスの本来のみずみずしさは5分に満たないものの、スパイシーやグリーン、さらにはバルサミックの酸味やウッディを駆使することで、ビターなレモンの香りが5時間近くも持続する。賦香率(15%)の高さもあるが、何といってもシトラス以外の素材でシトラスの香りを再現させる技術こそが、アトリエコロンのお家芸だと感じる。


ビターなシトラスにハーバルやアロマティックやウッディを合わせた、クラシカルな雰囲気のシトラスの香りはよくある。

でも、このセドラエニヴロンは創意工夫により、最初から最後まで、ビターなシトラスの香りが楽しめる稀有なフレグランスで、苦みの効いたシトラス好きにはたまらない香りだと思う。

 

おそらく、ベースのベチバーやエレミを土台に、ビターなレモンを想起させる香りを積み上げていくように創作されたのではと感じており、ゴールから創っていったため、時間が経ってもレモンの香りが崩れない点が優れていると感じる。
特に、トップのレモンが抜けた後の、レモンのピリッと苦い皮に、ミントとジュニパーベリーが香る瞬間が特に好みでおいしそう。それこそ炭酸がしっかりと効いたモヒートが飲みたくなる、そんな香り。