TOM FORD
NEROLI PORTOFINO FORTE
調香師:ロドリゴ・ローレンス・ルー
おすすめ度:★★★☆☆
画像出典:公式HP
トムフォードの代表作、ネロリポルトフィーノ。
元々、トムフォードのプライベートブレンドは、レイヤリング(重ね付け)を楽しむためのコレクションだったため、初期の作品のネロリポルトフィーノは、トップ・ミドルが厚めの構成になっている。
そしてこのフォルテは、文字通りネロリポルトフィーノを「強く」した香りのため、オリジナルの弱点でもある、香りが持続しない点を修正した、クラシカルなオーデコロンの完成系だと感じていた。
トップはシトラス・スパイシー。
ビターなオレンジと、爽やかなベルガモットの甘さに、ピリッとしたバジルのスパイシー感や、アロマティックなラベンダーがアクセントとして香る。ジョーマローンのバジル&ネロリコロンをもっとクラシカルに、ラグジュアリーにしたような素晴らしいオープニング。
ミドルはフローラル・グリーン。
トップのビターシトラスのビター部分を、ガルバナムのグリーンノートで迫力を与え、シトラス部分を明るいネロリで補強することで、トップの印象をはっきりさせたような香り。
このグリーンをしっかり立たせながら、爽やかで明るいネロリが前に出た瞬間が、この香りのクライマックスだと思う。
そこからネロリに、ペチグレンやオレンジフラワーの少しスパイシーグリーンの印象を加えながら、奥の方ではパチョリの籠もったウッディが香ることで、少しずつ暗くなっていく。
そんな暗さを、メタリック感を増したガルバナムで爽やかさに持っていったような香り。
ベースはウッディ・ムスキー。
オレンジフラワーとガルバナムのグリーンな残香に、レザリーなパチョリや、ドライなセダーウッド、さらにはウードやスモーキーなバーチなどの重厚なウッディミックスを加えた香り。そして、どこかしら動物的な深みを持たせたウッディムスクの香りのままドライダウンしていく。
持続時間はしっかりとネロリが感じられる香りが約2時間、その後オレンジフラワーのグリーンが暗くなったようなウッディの香りは5時間以上持続する。
クラシカルなメンズフレグランスらしいフレッシュ感や、ネロリの爽やかさを、ウッディのラグジュアリー感で整えた、まさしくネロリポルトフィーノのフォルテと思わせるような香り。
フォルテはオリジナルよりも、フレッシュなシトラスと爽やかなネロリがよりハッキリと鮮明になっている。さらに、ウッディミックスが加わることにより、男っぽい深みが加わったメンズ向けな香りに感じる。
ところが、一夏、フォルテを使ったものの、結局、オリジナルに戻ってしまった。
その理由は次の二つだ。
フォルテは、オリジナルの特徴ともいえたメタリックなグリーンシトラスが抑えられ、バジルでより果皮感を引き立たせ、グリーン感をガルバナムで補うことで、全体的にはよりナチュラル感がアップしている。さらにネロリの香りがより拡散する。
しかし、オリジナルのローズマリーのあのキンキンしたメタリック感や、ジャスミンを伴って現れる控えめなネロリの方がキャラが立っていて、個人的には好みだったことに気がつかされた。
次に、その価格。フォルテの香りは、アクアディパルマのエッセンツァ オーデコロンにとても似ている。ビターなシトラスフローラルウッディの香りを楽しみたいのであれば、頑張ってトムフォードにしなくても良いのではと考えてしまった。
とはいえ、ネロリポルトフィーノ フォルテは、男っぽいラグジュアリー感のあるシトラスコロンとしては、とても完成度の高い香りであることは間違いない。