FREDERIC MALLE
BIGARADE CONCENTREE(2002年)
調香師:ジャン=クロード・エレナ
おすすめ度:★★★☆☆
画像:公式HPより
シトラスの香りが好きだ。
特にオレンジは、爽やかさで、みずみずしくて、ジュースのような甘さやフレッシュな酸味もあり、何より美味しそうで、かいでいて気持ちが良い。
でも年齢的に、爽やかなオレンジだけではなく、もっともっとビター感を効かせた男らしいオレンジの方に憧れる。
そしてビガラード コンサントレは、軽やかさや透明感、フレッシュ感に加え、皮を剥いた時の鼻を刺す苦みまでも極限に再現した、究極のオレンジの香りに仕上げられていて、ここまでオレンジの苦みを追求したフレグランスは他に知らない。
トップはシトラス・スパイシー。
スプレーすると濃厚なみずみずしいオレンジと、クミンやブラックペッパーなど過剰なスパイスで味付けした香り。かなりスパイシーを効かせたゴリッと苦いオレンジに、うっすらとペチグレンの乾いたグリーンが、フレッシュ感やナチュラル感を添えている。
ミドルはグリーン・スパイシー。
オレンジのみずみずしさは一気に淡くなり、入れ替わるように果皮の苦味が増していく。この苦みがかなり男っぽい。でも、わずかにローズオイルが香ることで、粗雑な野性味に、明るさとフレグランスらしいを複雑さを与えている。
ベースはグリーン・ウッディ。
ペチグレンの残香や、苦味の骨格となっていたセダーウッドに、干草のような燻したカルダモンの苦味と、オレンジのもったりとした甘さ。そして、このビター感が抜けるいくと、みかんの甘皮のような香りが最後まで続く。
持続時間は、フレッシュなビターオレンジが30分程度、強い苦みに引っ張られたオレンジが3時間程度、みかんの甘皮のような仄かに甘苦い香りは5時間以上持続する。
終始オレンジらしい香りが消えないのは、分子蒸留することで実現したビターオレンジのエッセンスを加えたからかもしれない。
そして、オレンジという素材を、オレンジコロンやフゼアやウッディなどのいわゆるフレグランスらしい香りに持って行かずに、最初から最後までオレンジの皮の香りと完結しているため、オレンジ好きにたまらない逸品ではと感じる。
でも、それにしても苦い。特にクミンが相当効いていて、もう少しで苦いわき汗臭?がオレンジのに勝ってしまうくらいギリギリを狙った香りのため、毎回、使う時に一瞬躊躇してしまうほど。
オレンジオイルの過剰使用と、分子蒸留エッセンスに自信があったらこそ、ここまで苦みを追求できたような、非常にフレデリック・マルらしい香りだと思う。