SERGE LUTENS
SA MAJESTE LA ROSE(2000年) ※廃番
調香師:クリストファー・シェルドレイク
おすすめ度:★★★★☆
サ マジェステ ラ ローズ。和名「薔薇の女王」。
2017年末、セルジュ・ルタンスが一気に10種類ものフレグランスを廃盤にするニュースが駆け巡り、廃盤リストの中に、何とルタンスの代表作の一つ、サマジェステラローズが入っていて、真っ先にこのドラマティックな薔薇の女王を買いに走ったのも、今では懐かしい。
薔薇の女王、なんて素敵な名前だろうか。
コンセプトは、世界中から集めた薔薇の香りとのことで、とても強気だ。
トップはフルーティ・ローズ。
ハチミツを効かせたジューシーなグリーンアップルと、すっきりしたペアのフルーティな香りに、奥からキンキンとしたメタリックな硬いローズがその姿を見せている。
ミドルはローズ・グリーン。
トップのフルーティな甘さが減退すると、ペアの青っぽさだけが残り、そこからメタリックなローズグリーンの硬さが一気に存在感を増す。まるで棘を連想させる鋭く硬いローズの香り。鉄のローズ。そんなイメージだ。
次第にグリーンが収まってくると、今度はスパイシーが効いたナチュラルなローズの香りになる。肌に乗せると、ここまでが2時間くらい。
ベースはウッディ・ムスキー。
スパイシーが収まるとようやく、とろけるようなローズの重厚な甘さ、そして酸味を、サンダルウッドが女性らしい印象に仕上げている。やがて甘いローズにムスクが柔らかさを添えたままドライダウンしていく。
持続時間は4~5時間程度。
オープニングのフレッシュでみずみずしさ溢れるフルーティローズは、液色と同じ、輝くような黄色のイメージの香りで、果たしてここからどう変化していくのか?という期待に胸が踊る。
ところが、ミドルは棘を隠さない攻撃的なローズに一変する。この硬くメタリックなローズで身を固めた香りに、女王という名前が重なる。
トップの朝露を思わせるみずみずしく美しいローズに対して、ミドルのローズはその美しさを鉄の鎧で隠したような、まるで鉄の女王。
そして、その鎧を外すとまたハニーローズに戻るが、そこにはトップやミドルのようなみずみずしさはなく、控えめで上品な佇まいに落ち着いていく。
この薔薇の女王には、モロッコ産ローズが使用されている。そのローズは堪能できるものの、世界中から集めた薔薇の香りというのは、さすがにリップサービスだと感じる。
とはいえ、この薔薇の女王はドラマチックな香りだ。夢見る少女は女王という立場になったため、女王という役割を演じることとなった。そして夜、一人になったとき、女王という鎧を過ぎ、ありのままの姿に戻っていく。
もし、本当に世界中の薔薇を集めた香りだったら、ルタンスらしいドラマは生まれなかったのかもしれない。
そして今夜も、今は亡き薔薇の女王の香りを偲んでいる。