LE LABO
BIGARADE 18(2019年)
調香師:不明
おすすめ度:★★★★☆
画像出典:公式HP
香港のシティエクスクルーシブのビガラード18。
ビガラード18が発売された2019年は、いわゆる香港民主化デモが起こった年で、6月のデモでは主催者発表で最大約200万人が参加したとされる。
そんな激動のタイミングで発売されたビガラード18のコンセプトは、矛盾をはらんだパフュームとしている。どのような矛盾をはらんだ香りなのだろうか?
トップはフローラル・シトラス。
スプレーするとみずみずしいベルガモットと、そしてそのベルガモットから、明るく鋭いネロリが飛び出してくる。奥からはオレンジフラワーを煮詰めたような、グリーンスパイシーな苦みが香り、ビガラードという言葉にあてはまる。
ミドルはフローラル・グリーン。
ベルガモットをまとったネロリは、百合の透き通るようなフローラル感と合わさって、白さを増していく。水気を感じる、とても美しいネロリの香り。
一方で、こもったようなオレンジフラワーの苦みも少しずつ強くなっていく。ネロリの透明感のある白さと、オレンジフラワーの焦がしたようなグリーン。このコントラストがはっきりとしている。
やがて、百合のフローラルのコクが出てくることで、オレンジのグリーンが、百合の葉や茎のように見えてくることで、少しずつ調和していく。
ベースはアンバー・ムスキー。
百合の白さはムスクへ、オレンジフラワーのグリーンはドライアンバーに流れることで、ミドルの香りから大きく変わらずに、そのままドライダウンしていく。
シトラスのように爽やかなネロリ、グリーンを効かせたオレンジフラワー、その中間に百合を配置した香りで、春から夏に向いているのではと感じる。
ネロリや百合の高音とオレンジフラワーの低音が拮抗した香りが3時間くらい、その後はその上に淡いムスクが漂う香りが6時間くらい持続する。
先に書いたとおり、この香りのコンセプトは矛盾だ。
公式HPには「柑橘類のクラシックな香りと温かく超越したダークな香調とウッドの鼻先をくすぐるような香りがまるで綱引きをするように張り合いながらも決してどちらかが圧倒することはありません」とあり、確かにそうかも知れないと思う。
実際に、ビガラード18をかいでみて、ネロリに百合を重ねたこと、さらにはオレンジフラワーを煮詰めたことで、それぞれの個性を強調させているように感じてならない。
そして、これだけ主張が違う香りも、元を辿れば同じオレンジの花から抽出されている。オレンジの花を水蒸気蒸留したものがネロリで、オレンジの花を溶剤抽出したものがオレンジフラワー。
ビガラード18のネロリとオレンジフラワー。全く異なる香りだけれど、抽出方法が違うだけで、元は同じ。深読みしすぎだろうか。
そんな対立した両者を、純粋無垢な百合が調和させているような香り。
2000年代、仕事で何回か香港に訪れたことがある。そのうち1回はいわゆるビジネスツアーで、香港の展示会を視察した後、広州に移動して展示会を視察した。あの時は、香港がピカピカに映った。もしいま、同じコースを辿ったとしたら、どう見えるのだろうか。