GUERLAIN
ROSE BARBARE(2005年)
調香師:フランシス・クルジャン
おすすめ度:★★★★★
画像:公式HPより
ローズバルバル「野蛮なローズ」と題されたローズの香りは、私にとって最高のローズの香りを探す旅の到達点ともいえる名作で、このローズとの出逢いによって、もうローズ探しの旅を終わりにしても良いのではと感じるほど、素晴らしい香りだと思う。
野蛮なローズとはどんな香りなのか。
トップはローズ・アルデヒド。
スプレーすると、まずダマスクローズアブソリュートのフレッシュなローズの香りがツーンと鼻に刺す。すぐにアルデヒドのごちゃごちゃした酸味が加わり、ローズの刺すような鋭さを、強引に古くさいクラシカルな香りとしてまとめたような佇まい。
ミドルはローズ・スパイシー。
軽いところは酸味のあるローズを漂わせながら、奥からはピリッとスパイスを効かせたローズが上ってくる。ピラミッドにはフェヌグリークとある。言われてみると確かにカレーのスパイスのような香りだ。
そこから徐々にナエマを思わせるハニーローズの甘さがその姿を見せてくる。そんな美しいローズも、アンバーグリスやオリナバムの酸味やアニマリックな深みで、埃っぽく装飾されていく。
ベースはシプレ・ウッディ。
ピーチのような甘さが加わったハニーローズと、奥からはオレンジ湿ったウッディノート。トップから顔を出していた酸味やアニマリックな香りが、ここまで進むと、いわゆるパチョリを効かせたとても男性的なシプレだとはっきり分かるってくる。このローブの甘さとシプレウッディの香りでドライダウンしていく。
クラシカルなローズからスパイシーなローズが約1時間、そこから一気に甘さを増したローズが約3時間、最後はシプレが少しずつローズの前に出ていきながら、6時間くらい持続する。
真夏を除けば、どの季節でも似合う使用頻度の高い香りだと思う。
ゲランにはナエマという最高のローズの香りがある。
特にナエマの香水(廃番)のとろけるようなローズの甘さと、どこまでも香り立つその奥深さはいつ触れても魅了される。そしてどこまでも女性的だ。
一方でこのローズバルバルは、刺付きの華やかなローズを古くさいアルデヒドでぼやかし、随所で漂わせるナエマを思わせる甘いローズを男性的なシプレで濁らすことで、「男性を魅了するとともに、男性にもまとっていただける香り」として完成された、シプレローズの傑作だと感じる。
いにしえより、ローズは女性のための香りだった。
ローズの華やかな真紅の香りへの憧れと、使うことへの気恥ずかしさがあった。
でも、今では躊躇することなくローズの香りを楽しめる。男性でも似合う最高のローズの香り、ローズバルバルを片手に。