TOBALI
TWILIGHT ROMANCE(2019年)
調香師:不明
おすすめ度:★★★★☆
画像出典:meeco三越伊勢丹オンラインストア
ジャポニズム コンテンポラリーフレグランスとして、2017年に誕生したTOBALI(トバリ)。
毎年、伊勢丹のサロンドパルファムに行くと、トバリのブースは幾重にも人が重なっていて、その人気と注目度が伝わってくる。
このトワイライトロマンスは伊勢丹限定品の香り。
雅に秘める悲哀。
六歌仙のひとり、小野小町。絶世の美女とも言われ、情熱的な歌を数多く詠んだ。そして恋多き女性でありながら、生涯独身を貫いた彼女の生涯の「悲哀」をテーマにした香り。
トップはスパイシー・シトラス。
スプレーすると、鋭いカルダモンやサフランのスパイシーな香りの後ろから、ベルガモットのみずみずしさが引き立つ。奥からはクリーミー強めなオスマンサスがうっすら香ってくる。
ミドルはフローラル・フルーティ。
明るさや甘さを抑えたクリーミーなオスマンサスの香りを中心に、表層部はカルダモンの鋭さや、セージの硬いアロマティック、さらには嗜好の良いグリーンアップルが重なり合い、主役のオスマンサスは少し分かりづらい。
ベースはウッディ・ムスキー。
オスマンサスはアップルピーチのようなフルーティを強めるものの、クリーミー部分はサンダルウッドに移ろっていく。カルダモンやグリーンは、バイオレットのパウダリー感が、クリーミー部分にキリッとした硬さを与え、最後は日本香堂とともに開発したヒドゥン ジャポニズム 834の、硬いウッディが顔をのぞかせながらドライダウンしていく。
みずみずしさに包まれたオスマンサスは1〜2時間で、そこからオスマンサスのクリーミー部分がウッディと調和するように、全体では3〜4時間持続する。
いわゆるフルーティの明るさや甘さの対極のある、クリーミーなオスマンサスが、スモーキーなカルダモンやサンダルウッドの溶け込んでいくような、秋に似合う香りだと思う。冬だともう少しフローラルやウッディがはっきりしてほしいと感じるのではないだろうか。
和をイメージさせる控えめなオスマンサスの香り。フレッシュなスパイシー、グリーン、フルーティと、クリーミーなオスマンサスやサンダルウッドの対比で、悲哀な世界観を見事に創り出されている。まさしく悲哀の金木犀の涙があふれだしまわりを包み込むような香り。
秋の夕暮れに染まる空に描いたロマンス。
でも、秋の夜長というけれど、それも名ばかり。逢い引きの夜ともなれば、別して長いなんてことなく、たちまち明けてしまうように。
秋の夜も名のみなりけり逢ふといへば事ぞともなく明けぬるものを(小野小町)