YVE SAINT LAURENT
LIBRE EAU DE PARFUN(2019年)
調香師:アン・フリッポ、カルロス・ベナイム
おすすめ度:★★★★☆


画像出典:公式HP
初めてイヴ・サンローランのリブレの香りをかいだ時、とても感動した。
というのも、近年、10年前では考えられなかったくらい、高額のフレグランスが溢れかえっている。
我が道を行くニッチブランドに引きずられてか、ファッションフレグランスでも高級ラインへの注力が顕著になっているように見える。フレグランスのイベントにおいても、なかなか手を出せないような価格のフレグランスが多いのではと感じていた。
素晴らしい香りのフレグランスが増えていくことはもちろん喜しい。でも、このような状況をみて、疑問がわく。
発表される高級ラインが、価格に見合った素晴らしい香りというよりも、相対的に通常ラインのパフォーマンスが落ちているのではないかと。
なぜなら、通常ラインの新作は派生品が多く、どこかでかいだことがある、あのフレグランスに少し似ている、つまりキャラが立っていない、もっと言ってしまえばオリジナルを少しアレンジしたような、置きにような香りが多いのではと感じていたから。
リブレは、そんな通常ラインの停滞に対して一石を投じる、オリジナリティ溢れる、とても野心的で、攻めた香り。当時、拍手喝采したい気持ちだった。
カサンドラのロゴが横向きに鋲打ちされたボトルをスプレーすると、
トップはハーバル・シトラス。
タンジェリンの苦みの強いシトラスと、刺すような鋭いラベンダー、そしてほんのりとカシスのようなみずみずしさ。この特徴的なラベンダーが非常に男性的なため、もしかすると多くの女性はNGと感じてしまうくらいのオープニング。
ミドルはホワイトフローラル。
上の方はカチッとしたラベンダーを残しながら、そこからタンジェリンの甘さやネロリの明るさが前に出てくると同時に、華やかなオレンジフラワーと、妖艶なジャスミンの蜜のようなコクが一気に香ってくる。奥からうっすら香るバニラが、ホワイトフローラルの生々しさを引き立たせている。
本来、ここまで官能的なジャスミンは、下品に映ってしまうかもしれない。でも、ラベンダーの潔癖なくらいの硬さ、さらにタンジェリンの果皮感が、この官能的なバニラとジャスミンを白いベールで包み、さらにネロリが明るさを添えている。まるでタイトな白いドレスの奥の方から、真っ赤な下着が透けてみえるようなイメージ。
ベースはフローラル・スイート。
オレンジフラワーのフローラルな甘さと酸味を、バニラやライトウッディが目立たないように柔らかく仕上げていく。
ラベンダーをしっかりと効かせた官能的なフローラルが香りが2時間くらい、そこからバニラの真っ白い甘さが包み込むように5時間程度持続する。
緊張感のあるラベンダーやシトラスが、秋冬の乾燥した空気と調和しながら、フローラルやバニラの甘さが広がっていくような、クールでフェミニンな香り。
最初、ラベンダーの素晴らしい香りに魅せられ、これなら男性でも使えるのでは!と感じたが、実際に肌に合わせてみるととんでもない、これは100%女性のための香りだと思う。
マスキュリンなラベンダーと、フェミニンなオレンジブロッサムの2つの衝突。
表層をラベンダーで着飾ることで、内なる女性らしさを解放させたような、セクシーでクールなフローラルラベンダーの香り。ラベンダーは引き立て役に過ぎない。
男性で同系統の香りであれば、何といってもシャネル傑作のジャージーをおすすめしたい。
ところが、やはりこのリブレからもフランカーが増えてきている。これらの香りについてはコメントを控えたい。