フレグランスアッセンブル

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ラルチザン:タンブクトゥ

L'ARTISAN PARFUMEUR

TIMBUKTU(2004年)

調香師:ベルトラン・ドゥショフール

おすすめ度:★★★★☆

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画像:公式HPより

 

次々発表される新作フレグランスのなかでも、このタンブクトゥは色あせることなく、異彩を放っている香りだと思う。

タンブクトゥとは西アフリカのマリ中部の町の名前。この名前は遠く離れた場所、世界の果てという意味も持っているとのこと。そんなマリに伝わる「恋人たちを虜にする香り」をルーツに、ウッディやトロピカルフラワー、パピルスウッドなどアフリカ原産のレアな原料が散りばめられた香り。

 

トップはスパイシー。

スプレーすると、カルダモンのツーンとした青っぽさや、ピンクペッパーのややパウダリーなスパイスミックスの奥から、砂漠のような乾いたウッディと、フルーティな甘さがうっすらと香ってくる。

 

ミドルはウッディ。

ピンクペッパーを明るくも引き締まったスパイシー感は広がり、カルダモンは焦げ感を漂わせながらウッディと重なる。フルーティは少しニンジンのような硬さを持ちながら、みずみずしい甘さを増したグリーンマンゴーとしてまとまっていく。

時間の経過とともに、最初はグリーンマンゴーを覆っていたインセンスの焦げ感が、徐々に強くなっていくようなイメージ。ところが焦げ感が暗く沈んでいかず、軽い。

そんな軽いスモーキーとみずみずしいフルーティとの交錯がとてもエキゾチックで、さながらアフリカの大地を感じさせるような明るさにも感じ取れる。

 

ベースはウッディ・バルサミック。

フルーティが減退していくと、乾いたベチバーや湿ったパチョリで、さらにはクリーミーなミルラで、一気に焦げた印象が強くなる。そんなスモーキーの隙間から、明るいフローラル(カロカロンデ?)が感じられる。

そんな軽やかなフローラルを漂わせ、ウッディはベンゾインの甘さが柔らかくしている。全体的な印象としては、柔らかさと軽さのあるウッディの香りでドライダウンしていく。

 

最初はスパイシー全開。そこから焦げ感をまとったフルーティーが1時間くらい。さらにウッディが増していくものの、明るさや軽さを感じさせるアクセントを織りまぜることで、柔らかなウッディの香りが6時間くらい持続する。

 

そして、このアフリカの大地を連想させるような明るく軽やかなウッディノートは、季節や時間を問わずに使える香り。

 

ベルトラン・ドゥショフールの香りを、多く堪能したわけではないけれど、彼が創り出す香りの世界はとても難解だと感じている。
多くの香りに触れてみると、フレグランスにおいても法則があり、それは香りの組み合わせとか、香りの流れとか、かぎながら香りの全体像が想像できる。そして忘れないように、言語化しておく。

ところがドゥショフールの創り出す香りは、そういう法則に当て込めない、想像が追い付かないような変化の激しい香りが多い。それでいて全体としてはきれいにまとまっている。言語化しにくい。

タンブクトゥでいえば、おおざっぱにいえば野菜とお香の香り。野菜にはフレッシュなスパイシーやフルーティでアフリカを思わせる色彩を与え、お香は暗く沈むことなく明るさを含ませることで、お香の焦げ感が引き立つようになっている。そしてこの焦げ感がジリジリと肌が焦がされるようで、こちらもアフリカ的。

一見すると関係ないと思われるパーツが、実はすべて伏線で、香り全体では捉えると、そのすべてが回収されるようなイメージ、、、と書いていても分かりにくい。

恋人たちを虜にする香りは、かぐ人を魅了し、異彩を放ち続ける香り。