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メゾン クリスチャン ディオール:サクラ

DIOR

MAISON CHRISTIAN DIOR SAKURA(2017年)

調香師:フランソワ・デュマシー

おすすめ度:★★★☆☆

 

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画像:公式HP

 

メゾンクリスチャンディオールのサクラは、客観的に評価することが難しいと思う。美しいフローラルフローラルの香りであることは間違いない。

でも、日本の桜をイメージした香りと言われるとしっくりこない。

 

このサクラは、2017年10月にメゾン クリスチャン ディオールが表参道店を含めた世界3店舗限定(当時)で発売された際の新製品で、初めて店頭に足を運んだ時、まっさきにその香りをチェックしたことを思い出す。

 

トップはフローラル。

スプレーすると、フレッシュなグリーンローズがパッと広がっていく。この硬めのローズにクマリンのパウダリーな甘さをほんのりと添えることで、どこかサクラのイメージが感じられるような、クリーミーで優し気なフローラルな香り。

 

ミドルはフローラル。

そのクリーミーなローズの背後から、華やかなジャスミンや、少し籠ったライラックの甘さ、さらにはミュゲの硬いみずみずしさが交錯するような、美しいフローラルの香りに。その中心にいるクリーミーな白さが、全体を優しいフェミニンなホワイトフローラルブーケに仕上げている

 

ベースはパウダリー・ムスキー。

ホワイトフローラルの残香を、バイオレットの硬いパウダリーでエレガントに整えながら、最後は柔らかいムスクやクマリンが包み込んでいくようにドライダウンしていく。

 

春の訪れを予感するようなフレッシュなローズから、様々なフローラルの要素を見せながら、最後は白イメージとしてまとめるように4時間くらい持続する。

パウダリーな奥行きが、もしかするとこの香りはフレグランスよりもボディーミルクの方が映えるのではとも感じる。

 

言わずもがな春に似合う香り。フランソワ・ドゥマシー自身も「日本に滞在していたある春の日、私ははっと息を飲むような桜と出会い」「あの時の桜へオマージュを捧げたいと思い創った香り(公式HPより)」と述べている。

 

それでも、日本人がイメージする桜の香りは、こういう香りではないのではと感じてしまう。全体的には桜のような白イメージの淡いフローラルブーケの香りではあるものの、ホワイトフローラルのそれぞれの個性がはっきりしていて、派手さや華やかさが目立ちすぎてしまうため、桜を演じているジャスミンやライラックのようにも思えてくる。

桜はもっと繊細で儚く、それでいて硬さやグリーンや柔らかさが混在した香りで、同じディオールであれば、フォーエヴァー アンド エヴァーの方がイメージに近いのではと感じる。


やはり桜は目で楽しみ、まだ肌寒い気候を肌で感じるものかもしれない。

とはいえ、毎年桜が咲く頃、決まってこのサクラを手に取ってみる。美しいフローラルノートを楽しみながら、何かしっくりこないなと首を傾げるような香り。