MAISON CHRISTIAN DIOR
GRIS DIOR(2013年)
調香師:フランソワ・デュマシー
おすすめ度:★★★★☆
画像:公式HPより
グリディオールは元々、ディオールのエクスクルーシブラインのラ コレクシオン プリヴェから、グリモンテーニュとして、2013年に発表された。2017年プリヴェがメゾンクリスチャンディオールとして生まれ変わった際に、グリディオールと名前を変えて残された香りで、グリディオール(ディオールグレー)の方が香りの世界観に合っていると思う。
グレーは、クリスチャン・ディオールがこよなく愛し、いまではアイコニックな色として大切にされている。
そしてフランソワ・デュマシーは、ディオールグレーを香りで表現するにあたり、
もしディオール グレーが香水であったとしたら?この際立つグレーは、単に白と黒を混ぜた色ではなく、いくつもの色をブレンドすることで生まれた色です(公式HPより)。
と述べており、グレーに符合する香調としてシプレを選んだ。
結果、グリディオールは、さすがシプレの名香ミスディオールを作り出したディオールに相応しい、非常に完成度の高い現代的なフローラルシプレで、フランソワ・デュマシーの傑作一つだと感じている。
トップはシトラス・フローラル。
スプレーすると、ジューシーなベルガモットと、フレッシュなグレープフルーツの間を割ってくるように、スパイシーに包まれたキリッとしたローズが香り立つ。このローズは彩り鮮やかで、サフランを思わせる華やかさと、アーシーなオークモスやパチョリもほどよく感じられる。それらが落ち着いてくると、ベルガモットのみずみずしい甘さがとても心地よく香ってくる。
ミドルはフローラル・シプレ。
ここからローズの華やかさが増していくと思いきや、どんどんみずみずしくなっていく。このみずみずしさは何だろうか。
ベルガモットからの流れのジャスミンサンバックのみずみずしさ?
それともオークモスのキリッとした酸味?
とにかく、湿気が滴るようなみずみずしい透明感と、赤さを主張しないスパイシーなローズが調和した、美しくもエレガントな香り。
そして、奥からパチョリの柔らかいシプレが、ローズの存在感を際立たせる。
ベースはシプレ・ウッディ。
そんなローズがシプレと合わさることで柔らかくなっていく。反面、シプレを構成するオークモスやパチョリのアーシーな部分が、ローズシプレをグレー色に染めていく。そんなグレーシプレを、サンダルウッドやアンブロクサンがなめらかに仕上げ、最後はパチョリやサンダルウッドの少しパウダリーなウッディ感を漂わせながらドライダウンしていく。
フルーティの甘さではなく、みずみずしいローズやジャスミンサンバックを軸にした、美しく透明なフローラルの香りが2時間くらい、そこから透明感がグレー色のシプレウッディに移ろい、最終的には8時間くらい持続する。
色彩を抑えた、みずみずしく透明感のある香りで、一年を通して使うことができるけれど、淡いレザーを思わせるグレーなフローラルシプレは、秋冬にとても似合うのではと思う。
グリディオールは、パーツそれぞれを眺めてみると、シトラス、スパイシー、フローラルなど決してグレーではない色たち。そこにジャスミンサンバックやオークモスで淡い印象に一次加工し、パチョリで全体をグレー色に染め上げている。特にその中心にいるローズをグレーで表現している点は素晴らしいの一言に尽きる。
逆から見れば、グレーな色の中に様々な色が混在しているため、エレガントであり、スタイリッシュでもあり、とても都会的でモダンなイメージが伝わってくる。女性が使えばクール、男性が使えば締まった華やかさがあり、ディオールグレーが見事に表現された傑作だと思う。