PENHALIGON'S
JUNIPER SLING(2011年)
調香師:オリビエ・クリスプ
おすすめ度:★★★☆☆
画像:公式HP
ジュニパースリングは、ジンのカクテルに着想を得た遊び心の溢れるフレグランス。カルテルの香りを楽しみながら、遊びでは終わらせずに、フレグランスとしてしっかり作り込まれている作品だと思う。
トップはアロマティック・スパイシー。
スプレーすると、アンジャリカのキリッと硬いグリーンを、みずみずしいジュニパーベリーが包み込み、オレンジの明るさをほんのり添えた香り。ドライジンを思わせる、この爽快でシャープな刺激がとにかく心地良く、忘れがたい余韻を残す。
ミドルはスパイシー・ウッディ。
鼻先にアンジェリカのグリーンや、ブラックペッパーの刺激やカルダモンの冷涼感をを立たせつつ、ジュニパーベリーのみずみずしさにシナモンのクセのある甘さを添えた香り。
やがて、松やにも似た埃っぽいウッディが鼻先のグリーンやスパイシーと調和することで、どこか森林を思わせる香りを立たせ、さらに奥からは籠ったレザーが全体を柔らかく包み込んでいく。
ベースはウッディ・スイート。
ほんのりジンの硬さを漂わせた、アロマティックなベチバーや籠ったレザーの香り。そこに力強いドライアンバーやチェリーのような甘さを加えることで、マイルドなジンライムを思わせる香りに。甘さが抜けていき、最後はウッディムスクの香りでドライダウンしていく。
ドライジンを思わせるキレのある香りから、みずみずしいスパイシーやほのかなウッディの香ばしさを1時間くらい楽しみ、酒の余韻を含んだウッディの香りが3~4時間持続する。
硬いグリーンや、みずみずしさ、冷たさを帯びた、春夏に似合うアロマティックスパイシーの香り。ベース部分が少しこもっているため、春の方がよりキレイに香るのではと感じる。
遊び心のあるジンの爽快感や、まるで森林で癒されるような心地よさ、カクテルのような甘さを味わいつつも、全体はスパイシーやウッディで締めているため、ビジネスシーンでもとても使いやすい。遊び心と、どこか襟を正したような雰囲気が上手く調和した香りだと思う。
肌に乗せてみると、トップやミドルはスパイシーが鋭く、少し暴れる。でも、そういう要素を残しながら、全体はペンハリガンらしいカチッとしている。
難を言えば、前半のやんちゃパートと、後半の紳士パートのギャップが大きいため、通しで好きというよりも、前半が好き、いや後半が好きといった具合に、好みが分かれてしまうのではと感じる。
私の場合、スプレーしてからの30分間をこよなく愛している。