CHANEL
PARIS ÉDIMBOURG(2021年)
調香師:オリビエ・ポルジュ
おすすめ度:★★★☆☆
レ ゾー ドゥ シャネルは、マドモアゼルシャネルが愛した土地からインスパイアされたこのフレグランス コレクションで、2018年に発表された。このコレクションはライトでフレッシュな香りが多い。
その5作目にあたるパリ エディンバラは、究極のグリーンのみずみずしさが溢れるフレッシュさと、まるでツイードジャケットのような心地よさを持ち合わせるウッディアロマティックの香りとしている。
シャネルが愛したスコットランド(エディンバラはスコットランドの首都)のカントリーサイドからインスピレーションを得て誕生したフレグランス。
1924年、ココ・シャネルはウェストミンスター公爵、ヒュー グローブナーと出会い、イギリスの上流社会と競馬の楽しみを知った。彼女は社交界から離れ、澄みわたる湖や岩だらけの森に囲まれた緑豊かなカントリーサイド、スコットランドのハイランド地方に籠って過ごす時間を愛したとのこと。
トップはアロマティック・ウッディ。
スプレーすると、鼻先をフレッシュなシトラスがくすぐりながら、みずみずしいジュニパーベリーと、サイプレスの硬い針葉樹の香り。
ハッと目が覚めるような、とてもナチュラルで気持ちの良いオープニング。
ミドルはウッディ・アロマティック。
アロマティックなみずみずしさに包まれながら、こちらもアロマティックなメンズ調ラベンダーとドライなセダーウッドの香り。サイプレスやセダーの硬さを、ラベンダーが柔らかみを与えているようなイメージで、とても紳士的な佇まい。ウッディ部分には松脂のようなクセがあり、これがナチュラルなテイストを添えている。
奥からはまたもやアロマティックなベチバーが芯となり、ウッディの硬さや深さが増していく。
ベースはウッディ・ムスキー。
硬いウッディをしっかり残しながら、ラベンダーの柔らかい部分とムスクが香り全体を包み込んでいく。ビターなセダーとスモーキーなベチバー。でも重く暗い印象ではない。樹々の中から、ラベンダーのどこかクラシカルな甘さがしっかり感じられる。
やがてクラシカルなウッディとムスクの香りになり、そのままドライダウンしていく。
持続時間は4時間程度。前半のフレッシュなアロマティックウッディが1時間半くらいで、フレッシュさが収まってくると、静かで落ち着いたウッディムスクの香りになっていく。
春風のような爽やかさと新緑のようなみずみずしさの、春にもっとも似合う香りだと思う。梅雨以降は、ウッディのビター感が、暑苦しく感じられるかもしれない。
パリ エディンバラは前半と後半でかなり香りが変わる。みずみずしいジュニパーベリーに包まれたサイプレスの硬いウッディの香りは、緑豊かな森の中にいるようで、いつかいでも癒される。完全にオフの香りだと思う。同じシャネルで同じウッディをテーマにしたシコモアを彷彿させる。
一方後半は、イギリスの上流社会、社交界という言葉がしっくりくるような、とてもクラシカルで英国的。そして渋い。手持ちの香りだと、ペンハリガンのブレナムブーケがもっとも近い。
前半後半のギャップこそがこのパリ エディンバラの魅力であり、この後半の香りが苦手という人も多いのではと思う。