CREED
ORIGINAL VETIVER(2004年)
調香師:オリビエ・クリード(6代目)、アーウィン・クリード(7代目)
おすすめ度:★★★★☆
画像:公式HP
まだクリードが日本から撤退する前(2019年5月)までは、とても良く使っていた香り。今でも思い出したように時々手を伸ばしたくなる。使いやすさとオリジナリティのバランスの取れたベチバーの香りだと思う。
クリードのベチバーでは、従来の通りの根からの抽出に加えて、青々とした葉、本体部、これら3つの部位をすべて注入することで、よりフレッシュな新しいベチバーの香りを創り出したとしている。
新たなフレッシュベチバーとはどんな香りなのだろうか。
トップはシトラス・グリーン。
スプレーすると、マンダリンの果皮のピリッとした苦み、ベルガモットのみずみずしい酸味から突き出るように、鋭いリーフグリーンが鼻を刺す。そんな鋭いシトラスグリーンに、ジンジャーのフレッシュな辛みを置くことで、グリーンの青くささが和らぎ、ナチュラルなティーを思わせるような香りに。
ミドルはスパイシー・ウッディ。
爽やかなグリーンや、ジンジャーの辛みや酸味を残しながら、このフレグランスの主役ベチバーが香ってくる。ジンジャーに包まれているため、土っぽくアーシーさを引き立たせたベチバーの香り。この部分だけ見ると、とてもナチュラルに感じられる。
ここからベチバーは、パウダリーなアイリスや、柔らかいサンダルウッドを含んでいくことで、奥の方では少しずつフレグランスの香り立ちとしてまとまっていく。フレッシュなベチバーの土っぽさと、アイリスに包まれた上品なベチバーの深みがうまい具合に共存したような香りに。
ベースはウッディ・ムスキー。
やがてフレッシュな部分が落ち着き、丸みを帯びていくことで、ベチバーの木の硬さがはっきりしていく。ジンジャーやグリーンの残香と重なり、少しチクチクするようなベチバーの香り。そんなベチバーと乾いたセダーウッドを感じらがら、ムスクやアンバーを加えることで、静かにドライダウンしていく。
前半の2時間弱はシトラスやグリーン、スパイシーに囲まれたベチバーはとても爽やか。後半はグリーンの硬さやスパイシーのチクチク感を漂わせた、上品なベチバーに包まれながら、全体では4~5時間持続する。
爽快なシトラスやグリーン、そしてスパイシーなベチバーは春夏に似合う。爽やかな風に包まれながら、静かで優しさがとても心地良い。特に春という季節は、環境が大きく変化する。そういう時、気持ちを後押ししながら、心の粗を整えてくれるような存在だと思っている。
クリードのベチバーはユニセックスだけあって、ベチバーが持つ男らしさ、つまりアロマティックなウッディの部分はだいぶ削ぎ落とされている。例えば、ベチバーの代表作ゲランのベチバーと比較するとその差は顕著だ。
クリードのベチバーは、ジンジャーを加えることでベチバーの爽やかさやナチュラル感を高め、ムスクやアンバーで、誰からも愛されるベチバーに仕上げた。ベチバーの個性を楽しみつつ、男女問わずに愛される清々しいベチバーの表現だと思う。
そのため、ベチバーらしくないと感じる人も多い。でも、それで良いではないか、なぜならば良い香りなのだから。