CREED
SILVER MOUNTAIN WATER(1995年)
調香師:オリビエ・クリード
おすすめ度:★★★☆☆
画像:公式HPより
シルバーマウンテンウォーターはアバントゥスと並ぶ、クリードのなかでもっとも人気の高い香り。まだ日本で取り扱いがあった頃、メンズフレグランスでありながらも女性にも人気があった香りとのこと。
太陽の光を浴びたフランスの山々をイメージしたフレッシュな香り。
キリッとしたシトラスグリーン、グリーンティーの深みと甘み、なめらかなムスクやウッディがとても爽やかで清潔な香り。グリーンティー系統のなかでも、キャラクターや厚みもしっかり、リネンのようにまとめられていない。性別を選ばない、とてもバランスの良い香りだと思う。
トップはシトラス・グリーン。
雪山のような真っ白なボトルをスプレーすると、すっきりしたベルガモットと、ガルバナムのキーンとした金属音、さらにはビターなペチグレンや、ツンとしたカシスの冷たさを合わせたシトラスグリーンの香り。マンダリンの明るさが、雪山に注ぐ太陽のようにも感じられる。かなりグリーンが鋭く、これ以上行くと芳香剤とも受け取られてしまうギリギリを攻めたキレ感が、冬の刺すような空気を連想させる。
ミドルはグリーン・オゾン。
そんなキリッとしたグリーンをしっかり立たせつつ、グリーンティーの甘さが広がってくる。ペチグレンのスモーキーさと、カシスの水っぽさがティーにナチュラルな厚みを添えていく。
奥からややもったりとしたウォータリーな甘さが加わってくる。クリードでよく見かけるウォータリーオゾンの立ち方で、この香りの評価は一変すると思う。グリーンのキレがしっかり立てば、オゾンが柔らかく清潔な印象に映る。しかしオゾンがグリーンを呑み込んでしまうと、モタッとした暗い甘さが嗜好も下げてしまうのでは。
ベースはウッディ・ムスキー。
グリーンの爽やかさを余韻を立たせつつ、ティーの柔らかい部分がクリーミーなサンダルウッドがムスクにムスクが包み込んでいく。ここでもグリーンやしっかり立ってくれれば、とても透明感溢れるムスクに包まれながらドライダウンしていく。
最初の30分はシトラスやグリーンがかなり鋭く、北風が頬を刺したときのような冷たさ。でも肌の表面は冷たい感触を残したまま、奥は体温で徐々に暖められていくような柔らかい香りが4~5時間持続する。
ずっと、シルバーマウンテンウォーターの冷たくもみずみずしいグリーンティーを、夏に香らせたいと思っていた。けれども、日本の高温多湿の夏だと私の肌との相性が良くないのか、ウォータリーな甘さがモタッと立ってしまい、あまり気持ち良く香ってくれない。
クリードの香りは、天然原料を多く使っているためなのか、人や季節によって香り方が変わる作品が多い。もし、ムエットに近い香りが夏場に立ってくれれば、とても重宝する香りだと思う。
逆に秋や冬の乾燥した季節での香り方は、空気の澄んだ雪山のようでとても美しい。
キリッとした冷たさが空気と調和し、ティーのみずみずしい甘さが心地よく、白いムスクやサンダルウッドが清潔で暖かい。
それでも、冷たさや爽やかさが鋭すぎるようにも思える。
そのため、白イメージの柔らかいウッディムスクを楽しみたい場合、ガイアック10やオーアザールに手を伸ばすケースが多い。