4711
4711 EAU DE COLOGNE(1792年)
調香師:ウィルヘルム・ミューレンス
おすすめ度:★★★★☆
画像出典:公式HP
4711は現在も販売されているフレグランスのなかで、もっとも古い作品。
1792年、ドイツ ケルンのミューレンス社のウィルヘルム・ミューレンスは、婚礼の祝福として修道士から一枚の羊皮紙を授かった。そこに記載されていた処方に従って製造したのが世界初のオーデコロンは「アクア・ミラビリス(不思議な水)」と名付けられた。
発売から4年後。ナポレオンの占領により駐留したドーリエ将軍は、フランス軍の混乱を防ぐために、ケルンの全ての建物に番号を表示するように命令した。その時ミューレンスの仕事場に記された番号が「4711」であり、軍人達はアクア・ミラビリスを「オーデコロン(ケルンの水)」「4711」という名前とともに家族や恋人の元へ送り、フランス中に広まったとされる。(公式HPより要約)
それでは「オーデコロン(ケルンの水)」とはどんな香りなのだろうか。
トップはシトラス。
ボトルからバシャバシャ出すと(スプレータイプもある)、透き通るように爽快なレモンと、ビターなオレンジやプチグレン、奥からはラベンダーのキリッとしたハーバルの香り。
ミドルはシトラス。
1分ほどで爽快なシトラスが抜けてくると、みずみずしいベルガモットの甘さが前に出てくる。そこにローズマリーやラベンダーのハーバルを添えることで、ベルガモットの甘さを引き立てているように映る。
ベースはフローラル。
3分ほどでうっすらとしたビターなオレンジフラワーになる。やがてビターなところが減退すると、最後はネロリがおぼろげに香る。
気にせずにバシャバシャ使用しても、10分経たずに香りがほぼになくなっている。乗せた部位を直接かいでも、淡いフローラルがわずかに漂うだけ。
4711は、2007年にミューレンス社からドイツ モイラー&ヴィルツ社にブランドが託され、当時の製法に基づいて製造されている。
オレンジなどシトラスのエッセンス・オイル、少量のローズマリー、ラベンダーなどを、ピュアアルコールと水で調合し、さらに香りを熟成させるために、樽の中で2カ月熟成される。そして、創業からトップシークレットとされている最終工程を経て完成されるとのこと。
香調はいたってシンプルで、レモン、ビターオレンジ、オレンジフラワーを軸に、ハーバルなベルガモットの甘さがアクセントとして添えられている。
それはフレッシュ感に浸り、リフレッシュな香りに包まれる、わずか10分のドラマ。
個人的にはトップの爽やかなシトラスよりも、シトラスが抜けた後のベルガモットが好きで、この香りは性別や世代を問わない香りではと感じている。
そう考えると、4711はフレグランスというカテゴリーに当てはまらない、ナチュラルな香りが付いた水のような存在だと思えてくる。
今日のフレグランスの始祖とされる「オーデコロン」は、合成原料が開発されるとともにフレグランスの主流からは外れることで、現在のフレグランスとは異なるポジションを得た。結果、4711は長きにわたって愛され続ける存在となった。
現に今でも4711は使用する機会は多い。朝起きて使う。シャワーを浴びて使う。いつ使っても清々しい気持ちになり、癒される。そしてあと腐れなく、10分で消え去る。そこから今日のフレグランスを選ぶ。
価格も含めてこれほど使いやすい香りはなかなかなく、名香の名に相応しい。
さらにコロナ禍でも出番が多かった。疲れた心を解きほぐし、リフレッシュさせてくれる除菌水として。