MAISON FRANCIS KURKDJIAN
BACCARA ROUGE 540 EXTRAIT DE PARFUM(2017年)
調香師:フランシス・クルジャン
おすすめ度:★★★★★
画像:公式HP
バカラルージュ540(2014年)は、バカラの生誕250周年を記念して創られた香り。そして、そのエクストレバージョンは、フローラル、アンバー、ウッディの3つの息吹からなるきらめきと力強さを、より深めた香りとしている。
バカラルージュが織り成す、アンバーやウッディを焦がした、高熱で赤く輝くガラスの光。あの煌めきをより深めた香りとは、一体どんな香りだろうか。
トップはスパイシー。
スプレーした瞬間、鋭いサフランが鼻を刺す。ほんのりと香り立つアーモンドのアロマティック感、フローラルのみずみずしさ。オリジナルよりも静けさを感じさせるオープニング。
ミドルはアーモンド・フローラル。
鼻先はスパイシーを含む、引き締まったアーモンドのアロマティック感、そこにアーモンドのまろやかな甘さがゆったりと広がっていく。少しずつアーモンドの甘さを増しながら、奥からその存在感を隠せなくなったアンバーと重なり、アーモンドのナッティ感がはっきりしてくる。
一方で、序盤からその姿を現していたジャスミンは、華やかさや官能的な甘酸っぱい光でアーモンドの甘さをキラキラ照らしながら、その香りはフワッと広がっていく。
ここまで3時間。ゆっくりと変化していく甘い香りに、ゆったり身を委ねて、スカーレット色の美しいを夕陽を浴びているようなイメージ。
ベースはアンバー・ウッディ。
アロマティック感が抜けてくると、アーモンドの香ばしい甘さ、ジャスミンのエキゾチックな酸味に包まれた、いわばバカラルージュの代名詞的ともいえる焦がしたアンバーの甘い香り。こもったセダーウッドがアニマリックな深みを与えることで、特にジャスミンの官能的な側面を引き立たせているように映る。
さらに、ウッディが火薬のような焦げた厚みを与えていくものの、柔らかなムスクの抜け感が、その焦甘いアンバーをふわっと拡散させなが、ゆうに8時間以上、ゆったりと持続していく。
オリジナルと同様に、真夏以外は使えると思う。むしろオリジナルよりも凛とした印象のみずみずしさや、ウッディの温もりが強い分、空気が引き締まった冬の日こそ、エキストレ感を堪能できると感じている。
公式ホームページを見ると、エクストレについて、オリジナルのインスピレーションを裏切ることなく、3つのオーラの輝きをより強くしたものとある。
エジプト産のジャスミンがバカラ職人の声を優しく包み込み、モロッコ産のビターアーモンドのパウダーが火のような香りを引き立て、アンバーグリスを中心としたミネラルノートがムスキー&ウッディを調和させている。
確かにエキストレは香りを強くしただけの香りではない。バカラルージュらしさをしっかり残しながら、その輝きを高めている。
言うなれば、強烈な光を浴びた真っ白な視界が、徐々に視力が戻ってくるものの、かなりまだ白く霞んでいる。その目の前にある真っ赤なバカラルージュの香りの輪郭は、まだ定まることなく赤いオーラを放っている。ようやく視力が戻ってくることで、赤さがより鮮やかに映り、普段では気がつかなかった赤の陰影も捉えることができ、香りがより立体的に感じられる。
このエキストレにはそんなイメージが浮かぶ。
そして、バカラの赤を連想させる、鮮やかな赤いローブをまとった美しいボトルが、エクストレの世界観の見事に表現している。
バカラルージュ エクストレ ドゥ パルファム。
それはバカラ色の真っ赤な香りに包まれるだけではなく、心を射抜き、少しずつ赤いオーラに染められていく香り。