GUERLAIN
MON GUERLAIN EAU DE PARFUM(2017年)
調香師:ティエリー・ワッサー、ディルフィーヌ・ジェルク
おすすめ度:★★★☆☆
画像:公式HPより
今ではゲランの代表作になったモンゲラン。
発売当時、ゲランの新たな挑戦だと感じていた。
まず「モン ゲラン(私のゲラン)」という名前。直球だと思う。
そして女優アンジェリーナ・ジョリーを起用したこと。アンジェリーナ・ジョリーからインスパイアされた、力強く、自由で官能的な現代女性のフェミニニティへのオマージュとした、大胆で華やかな官能的な香り。正直、ゲランのフレグランスには、大女優をここまで全面的に使うというイメージを持ってなかった。
さらに香り。ありそうでなかったラベンダーとバニラの大胆な組み合わせ。この水と油のような組み合わせは挑戦的に見えた。香りそのものも大胆で乱暴で、これは好き嫌いがはっきりと分かれる香りだと感じた。
トップはハーバル・シトラス。
スプレーすると、非常に硬くハーバル感の強いラベンダーと、ベルガモットの香り。この特徴的なフランスのプロヴァンス産カーララベンダーの鋭い硬さが、ベルガモットのみずみずしい果実感、うっすらと香る立つベース部分のバニラの甘さを引き立たたせるようなオープニング。
ミドリはハーバル・フローラル。
ラベンダーとベルガモットとみずみずしい硬さをしっかり香らせながら、アイリスのパウダリー感と調和したバニラの甘さと深みが増していく。肌に合わせるとバニラの甘さに飲まれてしまい、あまり感じることができないが、ムエットだとジャスミンのコクや、ローズのピンクイメージのフローラルも感じ取れる。
ベースはバルサミック・ウッディ。
硬いハーバルやパウダリーが抜けることで、姿がはっきりしてきたジャスミン、バニラ、サンダルウッドの香りに。最後はアンバーが加わることでグルマンらしいバニラの甘さを感じながらドライダウンしていく。
持続時間は5時間程度。ハーバルな硬さを効かせたバニラが2時間くらい、そこならウッディアンバーがバニラの甘さを引き立たせていく。
ラベンダーでバニラの甘さやウッディの深みをより鮮やかにして香りで、寒い季節にとても映える。控え目ではあるが、女性らしいパウダリーやフローラルが脇を固めている。
モンゲランのコンセプトは、官能的で大胆な煌きを放つ、意志的な香り。
官能的なバニラに、レディースフレグランスではなかなか使用しなかったラベンダーを、なおかつクラシカルな面影を一切排除した鋭いラベンダーを対として置くことで、現代的で存在感のある香りを創り上げている。まるで新しいゲランの香りの幕開けであるかのように。
その反動で香りはあまりゲランらしくないようにも感じられる。モンゲランでは、ラベンダー、バニラ、サンダルウッドに頼りすぎていて、さらにサンダルウッドのケミカル的で、キャラクターを立たせた代償として、力任せで乱暴な印象にも映ってしまう。落ち着きや輝き、上品や複雑といったがゲランらしさが失われているため、ゲランであれば、もう少しジャスミンやアイリスの柔らかさが顔を出したような、大胆でも繊細な女性らしい香りに仕上げることができたのではと感じてしまう。
そして、もしモンゲランがラベンダーが好きであれば、シャネルのジャージーやサンローランのリブレも試す価値があるのではと思う。