2021年6月、好きなフレグランスを勝手にレビューするサイト「フラグランスアッセンブル」を始めた。
おかげさまで、本日現在で184レビューとなり、そのなかでも自分なりに印象に残っているレビューを7つ厳選してみることにした。
もちろん良い香り=良いレビューというわけでなく、書いたことすら忘れてしまうようなレビューもある。
このサイト開設のきっかけは、元々、定期的にアットコスメにクチコミやブログを書いていて、それがそれなりの分量となり、どうせなら自分のブログとして一つにまとめようと思ったから。
なによりも、昨年からのコロナ禍の影響で、人と会うことがままならず、エネルギーを持て余していたことも大きく、様々な鬱屈をフレグランスへの情熱としてぶつけたかったのかもしれない。
「フレグランスアッセンブル」のレビューは、大きく次の二つに分かれる。
①アットコスメから引っ越し組
引っ越しするにあたり、過去のクチコミを読み返してみると、出来が良いものと、誤字脱字を含めてひどい内容のものがあったため、一度香りをかぎなおして、できるかぎり再解析した。
②新たに書いたレビュー
ちなみに、レビューの内容を見てみると「解析系」「妄想系」「好きを伝えたい系」「良い香りだけど自分には合わなかった系」に分かれる。
1.シャネル:N°5(引っ越し組)
2021年はN°5生誕100周年を迎えたため、それにちなんだ企画品の発売や、イベントが開催された。改めて香りを解析しなおし、また100周年に対する感想を加えたため、ほぼ全面的な改稿となった。
レビューではN°5の普遍性をテーマに書いてみた。
香りやボトルデザインを変えない努力と、常に新しいプロモーションを行うことで鮮度を徹底的に管理し、常に新しいファンを獲得することを怠らない。
N°5の香りはもちろん素晴らしい。でもシャネルのマーケティングはそれ以上に凄まじい。100周年でその凄さが実感できた。
何よりも、私が持っているフレグランスの中で100年後も存在する香りは何本あるだろうか。1本もないかもしれない。
それでもN°5は間違いなく100年後も存在しているだろう。
2.ルイ・ヴィトン:ステラータイムズ(香り解析系)
今年のヴィトンは賑やかだった。
エトワール フィラントから始まり、オンザビーチ、イマジナシオン、スペルオンミーと続き、極め付けはゼクストレコレクションが一挙に5作品も発表された。
このゼクストレ、私自身もブログやツイートでは絶賛しているけれど、決して王道の香りではなく、邪道の香りだ。もっと言ってしまうと手品のようなフレグランスだと思う。この手品を解析してみたかった。
ジャック・キャヴァリエ提示した、エクストレ ドゥ パルファンの再解釈を解析してみると、今までヴィトンが得意としていた素材の確かさに重きを置いていないことが分かってくる。
例えばステラータイムズを香りをみてみると、高価な素材はほとんど使われていないことに気づく。それでも、ゼクストレをスプレーした瞬間の磁力は凄まじい。このジャック・キャヴァリエの魔術に魅せられてしまうと、ゼクストレ以前と以後のような、エポックメイキングな香りになるのではと思う。
3.ルラボ:ムスク25(コンセプト解析系)
今回、ルラボのシティー エクスクルーシブ コレクションをすべて解析してみた。なかでもこのムスク25は、香り、そしてコンセプトについてうまく解析できたのではと感じている。
常々、ムスクほど実際の香りからかけ離れている香りはないと思っている。白っぽく、清潔で、ふんわりと優しい香りで、ムスクの香りと謳ってしまえば、それはもうムスクだといわんばかりに。
でもそれは仕方がないことだと思う。天然のムスクがフレグランスを含めた一般製品に使用されることはなく、その全てが合成ムスクだ。つまりよほど香りに興味を持たない限り、本物のムスクを知る術がない。
ルラボがロサンゼルスの街を香りをムスクの香りとした真意(というよりも皮肉)を私なりに解析してみたのだけれど、どうだろうか。
4.トバリ:スモークフラワー(妄想系)
トバリは、2018年にサロンドパルファンに登場して以来、ずっとお気に入りのブランドだった。そして初めて買った香りが、このスモークフラワーだった。
香りはもちろん、コンセプトやボトルデザインのディテールまで和の要素が散りばめられていて、その世界観のファンになったと同時に、新作が出るのが楽しみだった。それ以上に日本の文化や精神をフレグランスという形にしたことが嬉しかった。
ところが2021年、突然ブランドごと廃盤となってしまったため、手持ちのフレグランスをあわててレビューした。廃盤の香り、ましてや廃盤のブランドのレビューほど意味のないものはないと分かっているけど、記録として残しておこうと思った(あと2レビューで完了)。
スモークフラワーでは、香りの背景と実際の香りの行間を、妄想を広げることで埋めてみた。花魁に煙を巻かれる男性側の視点として。
それにしてもトバリの幕引きは誠意がなかったと思う。トバリの後継サウザンドカラーズを応援する気持ちが全くなくなるくらいに。
5.ゲラン:シプレ―ファタル(妄想系)
残念ながらこちらも廃盤となってしまった、ゲランのエリクシールシャルネル コレクション。このコレクションは現代女性をイメージして創られた香りで、さらに異性の意識をどうコントロールするかと意図が感じ取れる。こういう香りは、かぐだけで妄想が広がっていく。
このシプレーファタルは「抗えない魅力を持った運命の女の香り」とあり、そのような香りと聞けば、世の多くの男性は興味を示すのではないだろうか。
そしてシプレーファタルの香りのテーマは思わせぶりだと思う。
(ここから全て男性の妄想)もしかしたら彼女は自分に気があるかもしれない。これほど強烈なアプローチはあるだろうか。気があると言われれば、答えは単純だ。でも、あるかもしてないと思わせた時点で、この勝負は女性の勝ちだ。あとはもう、その女性の手の内で転がされるだけ。
そんな妄想が膨らむような、世の男性を虜にする香り。
6.キリアン:ローリング イン ラブ(妄想系)
ローリングインラブは他のキリアンの香りと異なる方向性を持ちながら、もっともキリアンの世界観が表現された香りだと思う。
キリアン唯一のスキンフレグランスで、ムスク ド ポー(肌のムスク)としている。
それでもローリングインラブは肌に溶け込むように香るだけでなく、その肌に密接した相手を意識した香り。互いの肌が密着し、それぞれの肌の匂いを感じ合う瞬間の香り。
最初、ローリングインラブのレビューを書いた時、妄想に呑み込まれてしまい、あわてて書き直したほど。キリアンほど、書いていて楽しく、そして妄想が膨らむ香りはない。