PEHGALIGON'S PORTRAITS COLLECTION
TERRIBLE TEDDY(2019年)
調香師:クエンティン・ビスク
おすすめ度:★★★★☆
画像:公式HP
ペンハリガンのポートレートコレクションのテリブル テディ。悪い男テディとは、まあ何とも酷いネーミングだ。
人を夢中にさせる、ミステリアスな二面性。会話上手で、鋭いウィットで知られるテディは、冷静沈着なハンターでもあります。社交的でありながら、どこか危険なムードを漂わせる彼に、人はいつのまにか引きこまれ、親密な関係に発展してしまうのです(公式HPより)
コレクションの中での悪い男テディの立ち位置を見てみると。
テディは女性たちのハートを追うハンターであり、そのスリルを楽しんでいる。そして次の獲物は、ジョージ卿とブランシュ夫人の娘ヘレン(最新の相関図を見ると娘でなくなっている?)。ところが、ヘレンはテディの手の内をよく解かっている様子で、なかなか自分のものにならない獲物ほど手に入れたくなる。
彼はついに理想の女性に出会ったと思っていた。
悪い男テディ。果たしてどういう香りなのだろうか。
トップはウッディ・スパイシー。
スプレーすると、インセンスのスモーキーなウッディ感と、ブラックペッパーの焦げた刺激。その香ばしさを突き破るように、オリバナムの酸味がツーンと広がっていく。
ミドルはウッディ・レザリー。
インセンスやブラックペッパーの焦げついたウッディを漂わせながら、セダーウッドのアニマリックを含んだ乾いたウッディ感と、オリバナムの酸味そしてミルキーなコクを合わせた香り。インセンス、ペッパー、セダーの組み合わせが、ワイルドな雰囲気を醸し出す反面、オリバナムのコクや、ほんの少し添えられたレザーが全体的なトーンをクールにまとめているようなイメージ。
ベースはアンバー。
そんなワイルドとクールの狭間を揺れ動く香りに、ドライアンバーの力強い辛さや、墨汁のようなパチョリを加えることで、野性味が増してくる。スパイシー、スモーキー、ミルキーを含んだ、刺激的なアンバーを立たせながらも、奥からアンブロクサンが全体を柔らかく包み込んでいく。
ワイルドとエレガントを併吞した、男らしい色気を香らせたまま、静かにドライダウンしていく。
最初の10分は刺激的なスパイシーウッディ、そこからスモーキーなウッディとレザーが2時間弱、焦げたアンバーと柔らかいアンバーのコントラストは5~6時間持続する。
インセンス、レザー、アンバーを軸に、焦げたブラックペッパー、神秘的なオリバナムで演出したような香りで、甘い要素がまったく含まれていない。秋を中心に冬にかけて似合う香りで、真冬だともう少し甘さが欲しくなるのではと思う。
白いシャツに黒いネクタイ。フォーマルと思いきや、ジャケットではなく、真っ黒な革ジャンを羽織っているような香り。テディのキャラクターはサイで、テーマは強さ、自由な生き方。
誰かのための香りではなく、自分のための香り。
フレグランスが好きな男性ほど好きになる香りではないだろうか。
何よりも女性からの視線を全く意識していない。そういう香りに映る。
ハンターというほど攻撃的ではなく官能的でもない。相手によって、キャラを使い分ける冷静沈着なハンターの香り。
本当は女性など愛していない。その駆け引きを楽しんでいただけだ。そういう余裕がこの香りの魅力ではと感じる。
彼はついに理想の女性に出会ったと思っていた。
ところが、思いもよらないことが起こる。テディが本気で恋に落ちてしまった相手は、ヘレンと姉妹のローズ公爵夫人の夫、ネルソン公爵だったのだ。
このストーリーも香りをかぎ込んでみると納得する。そしてポートレートコレクションの世界観にはまっていく。