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シャネル:コロマンデル

CHANEL

LES EXCLUSIFS DE CHANEL COROMANDEL(2016年 ※EDTは2007年)

調香師:ジャック・ポルジュ、クリストファー・シェルドレイク

おすすめ度:★★★★☆

 

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画像:公式HPより

 

コロマンデルは、ココ・シャネルが愛したというコロマンデル屏風をイメージした香り。実際、彼女のパリのアパルトマンの壁一面にはコロマンデル屏風が飾られていたという。

まるでコロマンデル屏風のような、ミステリアスでオリエンタルな香りとはどんな香りだろうか。

 

トップはシトラス。
スプレーすると、まるで太陽のように眩しい、キラキラ輝くシトラスミックスの香り。ビターオレンジの甘さや果皮の苦みを、透き通るようなネロリで明るく仕上げた、心が洗われるオープニング。
 
ミドルはウッディ・フローラル。
そんなビタミンを思わせるシトラス・ネロリに、アーシーなパチョリが土っぽい深みを与えていく。ローズやジャスミンのフローラルが、パチョリを明るく照らし続けていくものの、アイリスがパチョリの土っぽさを滑らかに整え、さらに深みを補うことで、パチョリの静寂な香りが徐々に全体を支配していく。
クラシカルな趣きの、どこか懐かし気のあるパチョリと、パチョリを照らすシトラスやフローラルなツヤ感。この組み合わせが、まるでコロマンデル屏風のようで、一般的なオリエンタルな香りとは異なる、独特な世界観を醸し出している。
 
ベースはアンバー・オリエンタル。
そんなパチョリの湿っぽい土っぽさを、ドライなアンバーの辛みが硬く仕上げていく。一方で、ホワイトチョコレートの白っぽく柔らかな甘さが、パチョリやアンバーの硬さをなめらかにほどいていく。さらに、ほんのり香るオリバナム(フランキンセンス)の酸味が、この硬質なアンバー・オリエンタルな香りに、どこかミステリアスな印象を与えていく。そう、目を瞑ると、ココ・シャネルのアパルトマンの空気感が伝わってくるような香り。
やがて、パチョリはシプレ調として落ち着いていき、ベンゾインのバルサミックな甘さや、インセンスのビターなウッディ感を漂わせながらドライダウンしていく。
 
まずスプレーした瞬間のシトラスが美しい。その背後に感じられるパチョリの深みが、香り全体の荘厳な佇まいを予感させる。そこから、そのパチョリを中心とした土っぽいフローラルが2時間くらい香り、パチョリやアンバーの深みを、ホワイトチョコレートの柔らかい甘さが包み込んでいくように、6時間程度持続する。
 
秋冬に似合う香りだと思う。まるで自然に還るようなパチョリの土の匂いや、アンバーやオリバナムの深みは、肌寒い空気をほぐしてくれる。そんな自然と対照的なフローラルやホワイトチョコレートのエレガント感。この対比が美しくまとまったような香り。
 

常に第一線で活躍していたココ・シャネルがアパルトマンに戻る。ホッとくつろげるような安らぎと、常に新しいアイデアを生み出す導火線になるような美の刺激。コロマンデル屏風にはそのような役割があったのかもしれない。

 

そして、このコロマンデルもシコモアと同様、クリストファー・シェルドレイクの影響が色濃く出ている作品だと思う。随所に感じられる、オリエンタルではない東洋の空気。こういった雰囲気は、他のシャネルの作品には見当たらない。

改めて、シャネルが織り成す香りの世界観。その奥行きと幅は素晴らしいと思う。N°5とは異世界のココ・シャネルの姿。