フレグランスアッセンブル

香りを解析・言語化するサイト

ル ラボ:オスマンサス 19

LE LABO

OSMANTHUS 19 (2024年)

調香師:不明

おすすめ度:★☆☆☆☆

公式HPより

オスマンサス19はシティエクスクルーシブシリーズの18作品目、京都限定の香り。日本ではガイアック10(東京)に続く、2番目の香り。

 

この香りのコンセプトについて、公式HPには次のように書かれている。

あらゆる植物が休眠に入る初冬、庭師たちは金木犀の花が咲くのを待ちわびます。第一印象は、インセンスとラベンダーのノート。そして主役の花が現れ…クリーミーで高揚感があり、その後ろにウッディで樹脂のようなトーンが続きます。そのコンポジションはまさに京都のよう。伝統的な町家が時にコンクリートやネオンと調和し、遥か昔の天皇の庭園から目と鼻の先にゲームセンターがあったりするような、この街にふさわしい趣のある香りです。これは、永遠の都のための俳句。京都限定の香り。

 

オスマンサス19がローンチされ、最初にこのコメントを読んだ時、違和感と「大丈夫か?」と不安を感じた。

結論を述べれば、私の不安は的中してしまった。あくまで個人的な見解であるが、このオスマンサス19は、シティエクスクルーシブでは最も完成度の低い作品であり、以前はあれほど熱かったシティエクスクルーシブ熱も冷めてしまい、さらにもうこのシリーズから卒業することを決めるきっかけにもなった。

 

違和感について、まずオスマンサス(金木犀)から。多くの日本人は金木犀を「初冬」の香りなど思っていない。当然、金木犀は秋の季語であり、金木犀の花の香りが舞い始めると「ああ本格的に秋が来たな」と教えてくれるような存在。

次に、このコンセプトの京都の街の説明を読んで、なんて観光ガイド的なテンプレートだろう、何か「京都っぽい物語」を押しつけられていると感じてしまった。さらに伝統(町家・庭園)と現代(コンクリ・ネオン・ゲーセン)、この対比から、京都と感じる人などいるのだろうか。

 

出逢う前から違和感があり、つまり第一ボタンから掛け違えていた、このオスマンス19はどういう香りなのだろうか。

 

トップはアロマティック。

スプレーすると、オスマンサスのカラフルな断片、ただしほんの一瞬香る。すぐにハーバルなラベンダーと重なる。この薄いオスマンサスとラベンダーの組み合わせは、アニスにも似たアロマティック感がある。このアロマティック感をオリバナム(フランキンセンス)の酸味が覆っていくイメージ。奥からほんのりインセンスのウッディ感。色彩を抑えた、静寂なオープニングだと思う。

 

ミドルはバルサミック。

オリバナムのミルキーな酸味がかなり分厚い。その内側からオスマンサスとラベンダーのアロマティック感が喘いでいる。時間の経過とともにアロマティックが消えると、中心からどっしりとしたアンバーが広がっていく。

 

ベースはウッディ・アンバー。

オリバナムのミルキーな残香と、重厚なアンバー。そこにインセンスとセダーのスモーキーをアクセントとして散りばめ、静かにそのままドライダウンしていく。

 

全体的な香りの構成を見ると、オリバナムとアンバーを背骨に、 アロマティックなオスマンサスやスモーキーなウッディをアクセントとして置いた、かなりシンプルな設定。香りの移り変わりもなく、静かなシングルノートだと思う。

トータルでは5〜6時間は持続するが、香りが変化することなく、時間ともに儚くなっていくため、終盤はかぎに行かないと分かりにくいかもしれない。

 

まるでスキンフレグランスのような静かな香りとシンプルな構成で、エクスクルーシブではガイアック10やベンゾイン19(モスクワ)の立ち位置に近いと思う。

 

ガイアック 10は、各都市において、エクスクルーシブ人気No.1の香りとされている。私自身も最も好きな香りの一つだ。

徹底されたミニマリズムと洗練された静けさ。肌と一体化し、纏う人のパーソナリティを引き立てる、計算され尽くした調香は、ルラボの芸術性の極みだと思う。

そもそもガイアックという素材や香りをみても、全く東京ぽくない。しかし、その香りには、日本の文化や日本人というアイデンティティに対しての理解とリスペクトに溢れている。なぜルラボが特に日本で人気があるのか、それはこのガイアック10の存在がかなり大きいからだと思う。

 

一方、ベンゾイン19は、トルストイの『アンナ・カレーニナ』で、アンナがモスクワ駅でヴロンスキー伯爵と出会い、全てが変わる瞬間、人生が転落する瞬間、何もかもが今までと同じではなくなる瞬間を表現したとのこと。

オリバナムの印象が少しオスマンサスに似ている。ただ、あくまでもオリバナムがウッディやベンゾインの神秘性を高めるサポートに徹していて、香りのメリハリがある。オスマンサスはオリバナムが全てを薄めてしまい、香りの印象がのっぺりしている。

 

それにしてもなぜ「オスマンサス」という名前にしたのか。ルラボには、タイトル素材をメインの香りにしないケースが多々ある。オスマンサス19からは、金木犀の香りの美しさ、花への憧憬、秋の夜長に漂うノスタルジック感などは感じられない。「初冬に待ちわびる金木犀の花」といった違和感を地で行っている。

 

かつて愛した、シティエクスクルーシブの高い芸術性。その都市に対するリスペクトや深い理解。未踏の都市へ思いを馳せるロマン。残念ながら、このオスマンサス19は観光客目的のご当地香水だと思う。

(といいながらも、この香りのために京都に行き、購入した)