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ペンハリガン:ザ コヴェテッド デュシェス ローズ (誰からも愛されるローズ公爵夫人)

PENHALIGON'S PORTRAITS COLLECTION

THE COVETED DUCHESS ROSE(2016年)

調香師:クリストフ・レイノー

おすすめ度:★★★☆☆

 

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画像:公式HPより

 

2016年に発売されたペンハリガンのポートレートは、イギリスの上流階級の秘密、ウィット、人間関係、ユーモア、刺激的なエッセンスを持って表現したフレグランスコレクション。ボトルキャップは、各キャラクターのイメージからインスピレーションを受けた動物になっている。

そしてこのザ コヴェテッド デュシェス ローズは、バランスの取れた、とても美しいローズの香り。

 

トップはシトラス・ローズ。

スプレーすると、フレッシュなマンダリンの甘さと、スパイシーなピンクイメージのローズ。このスパイシー部分がシトラスと調和した、爽やかで明るく可愛らしいローズの表情。

 

ミドルはローズ。

鼻先は可愛らしいピンクローズを香らせながら、徐々にローズの色、そして香りが濃くなっていくイメージ。ゼラニウムにも似たアロマティックな硬さ、そしてローズの油っぽい重さが、ピンクローズに誘われ、拡散していくことで、ピンクの奥から赤さが増していく。

さらに奥からパチョリの湿った暗さが、ローズの明度を多彩にしていくことで、ローズの美しさを高めているようにも映る。

 

ベースはウッディ・ムスキー。

そんな色とりどりのローズを香らせながら、パチョリで深みを与えつつ、ムスクでウッディの深みを抜いていく。もしこのままムスクで包み込んでいけば、クルジャンのアラローズに近い香りになってのかもしれない。でも、パチョリの少しアニマリックな温もりがムスクと重なることで、どこか官能的な女性の匂いが伝わってくる。そんな体温を感じさせるローズを漂わせながら、ドライダウンしていく。

 

フレッシュで可愛らしいローズで始まり、前半は華やかなローズを楽しみながら、後半は官能的なローズと共に4~5時間持続する。

 

季節は問わないローズの香りで、女性であれば1本持っていると重宝するのではと思う。ムスクやパチョリに呑み込まれることなく、最初から最後までローズが楽しめるのでは。

 

逆説的にいえば、奇をてらっていない美しいローズなため、他のローズのシングルノート(ナエマユヌローズなど)と比較すると個性が乏しく、当たり障りがない。

それでも、爽やかさ、可愛らしさ、華やか、重さ、清潔、そして官能的な肌の温もりなど、さまざまなローズの表情を見せつつ、そのいずれにも染まっていかないギリギリを渡り歩くような、バランス感覚に長けた香りで、「誰からも愛されるローズ公爵夫人」という名前がピタッとはまる。

 

ザ コヴェテッド デュシェス ローズはキャラクターは「キツネ」で「若い美しさ・ずる賢さ」の意味を持たせている。

そんなローズ公爵夫人の夫「ネルソン公爵」の関心はもっぱら劇場通いで、彼女はとても退屈している。

 

もしかすると公爵は彼女の魅力を知らないのでは。

なぜなら、ザ コヴェテッド デュシェス ローズの香りは、初々しいローズのつぼみ、降り始めた雨のようにピュア、冷たいロゼワインのようにすっきりとした爽やかさ。しかし、ふいに現れるパチョリによって解かれる彼女の違う一面は、官能的な想像をかきたてるような香り立ち。

そう考えると、公爵はもっとどろどろした背徳的なローズに溺れたいのかもしれない。

 

それでも彼女は、夢見ている。それは、胸部を締め付けているヴィクトリア風のコルセットのような毎日から解放されること。楽園をもう一度手に入れるために。

そして、可愛らしいローズの花は、いつも誰かに摘み取られるのを待っている。

そう、ローズ公爵婦人は、その育ちの良さからか、それほどずる賢くなく、ましてや女狐には決してなれない、純粋に美しい女性の香り。