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キリアン:エンジェルズ シェア

KILIAN

ANGELS' SHARE(2020年)

調香師:ブノワ・ラプーザ

おすすめ度:★★★★★

 

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2020年秋に登場したキリアンの新コレクション「ザ リカーズ」。エンジェルズシェアはローゼスオンアイスと同時発売された。
ヘネシー家に生を受けたキリアンらしいコンセプトと香りに加えて、まるでグラスにコニャックが注がれたような液色、そしてボトルがとにかく美しい。
エンジェルズシェア(天使の分け前)とは、まるで神への捧げもののように、リカー醸造の熟成の過程で樽から自然と蒸発するコニャック。この神秘的な分け前をヘネシー家では「エンジェルズ シェア」と呼ばれているらしい。
 
トップはコニャック。
スプレーすると、芳醇なコニャックとしか表現できない香りにうっとりする。実際にコニャックから抽出されたエッセンスが使用されているとのことで、みずみずしいアロマティック感、フルーティな甘さ、スパイシーな辛み、アンバーの深みを融合させたような素晴らしいオープニング。
 
ミドルはスパイシー・グルマン。
そのコニャックのアロマティック感をしっかり残したまま、さらに甘さが増していく。上の方はシナモンのクセのある温かい甘さ、中ほどはまるでビーンズ感強めなトンカビーンの甘さ。それらがコニャックのフルーティ感と調和することで、アップルのようにも感じられる。
このアップルシナモンが、アロマティック感に溶け込んでいき、さらに奥から漂ってくる樽を思わせるウッディに浸っていく過程が、コニャックを熟成させているようなイメージに感じる。
 
ベースはウッディ・グルマン。
アロマティック感が収まってくると、シナモンを漬けたウッディが上の方に立ち、奥からはヘーゼルナッツの香ばしい甘さがはっきりしてくる。
やがて甘さの部分がまろやかなバニラに移り、シナモンのスパイシーな残香、琥珀色のアンバー、サンダルウッド、さらにはタバコのようなビターなウッディと重なることで、液色イメージを保ったままドライダウンしていく。
 
みずみずしいアロマティック漂うコニャックの甘さが2時間くらい、そこから熟成させるように甘さや深みを加えながら、たっぷり8時間以上持続する。
 
グルマンの甘みやウッディアンバーの深みがメイン。そこにコニャックを思わせるフルーティ、スパイシー、アロマティックを上に重ねていったような香りで、秋から冬の夜に似合うと思う。
 
キリアンが創り出す酒イメージの香りは、とにかくトップが抜群に良い。このエンジェルズシェアをスプレーした瞬間のコニャックは、特にフルーティの艶やかな甘さと、スパイシーのフレッシュ感が素晴らしく、まるで香りが輝いてみえるかのよう。
 
そもそもコニャックとは、ブドウでワインを造り、そのワインを2度蒸留することでアルコール度数を高め、さらにオーク樽で3年以上熟成させることで出来上がる。熟成の過程で、オークの風味が加わり、液は琥珀色に染まっていく。
エンジェルズシェアは、実際にコニャックから抽出されたエッセンスを使うことで、自然な琥珀色を帯びていているとのこと。
 
コニャック一家に生まれ、コニャックに囲まれて育ったキリアンが創り出したコニャックの香り。もう間違いないのではと思う。そして、スプレーした瞬間、その神々しい輝きに、鼻だけでなく心も酔いしれる。
そんな余韻に浸りながら、さらにコニャックを熟成させて、オークの深みまで堪能できるような香りに仕上がっている。
 
外で酒を飲みながら楽しみたい香り。酒の風味、さらにその場の雰囲気をワンランク上げてくれるのではと妄想しながら、まだ試せてない。外で酒を飲む機会がめっきり減ったたため、エンジェルズシェアを使うシーンが見つからなかった。
でも少しずつ、飲み会の予定が入り始めている。
そろそろ出番だぞ、エンジェルズシェア。